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「詩の中の戦争と風土」本多寿著

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朝日新聞宮崎版の連載だった「詩の中の宮崎」が「詩の中の戦争と風土ー宮崎の光と影」(本多寿著)と改題して発行される。175頁。
著者は、改題の理由を「後記」で下記のように語っている。

「それは稿を書きすすめていくうちに、詩人たちの詩作品の背景に戦争と、愛憎相半ばする風土へのしがらみが抜きがたく存在しているのに気づいたからである。つまり戦争体験と風土のしがらみを内包しつつ、それぞれの立場で真摯に自らの詩を紡ぎつづけた詩人たちの営為を、より明らかにできるのではないかという思いからである。」


11人の詩人が取り上げられている。
真田亀久代
嵯峨信之
富松良夫
伊藤桂一
渡辺修三
本多利通
高森文夫
大森一郎
金丸枡一
南邦和
大山鐵也


私の尊敬する南邦和先生の頁の一部を下記に紹介。


***************


帰郷 (南 邦和)

ふるさとは いま
おれの目の中にある
熱帯樹の葉蔭にまぶしく光る
陽炎の時間となって
ふるさとは いま
おれの掌の中にある
秘密のようにじっとり汗ばむ
少年期の記憶となって。

おれがふるさとを見失っていた数年間
たった一枚の紙切れが
あっけなくおやじを殺した
おふくろの額に苦悩を刻んで
おもいおもいの道を走って去った
カラマーゾフの兄弟たち
ふるさとの空は
きょうも底抜けの蒼さだ。

剃刀のようにおれは街を歩く
とぎ澄まされた悲しみを抱いて
前科者をむかえる親戚たちのように
このあかるい歩道は
よそよそしくおれを見つめる
強姦された少女の傷痕を覗くように
ふるさとは いま
おれの不幸をはげしく抉る。

ざらざらと砂を噛む悔恨となって
ふるさとは いま
おれの舌の上にある。


この詩は、引き揚げのときの帰郷を書いたものではない。高校卒業後に宮崎家庭裁判所に採用されたのち、東京最高裁判所書記官研修所速記部に入所。卒業後、大阪地方裁判所、横浜地方裁判所、鹿児島地方裁判所と勤務したあと、家庭の事情で宮崎に帰郷した時期のものである。だが、十三歳で引き揚げたときと同じく、彼は異質な帰郷者だった。


***************


戦後70年の今、私たちは決して安穏としてはいられない位置に立たされているのだと実感する。
こんな不安な時代だからこそ、この本の詩人たちの声にも耳を傾けて欲しいと、私もまた強く願う。


***************


『詩の中の戦争と風土ー宮崎の光と影』

著者/本多 寿
発行所/㈲本多企画
(TEL.0985-82-4085)

発行日/2015年8月15日初版
定価/1000円+税


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Commented by kojiro-nomama at 2015-08-11 08:40
「詩の中の戦争と風土」本多寿著
いい本が出ましたね。錚々たるメンバーですね。
Commented by 月波与生 at 2015-08-11 09:02 x
お気に入りをひとつ紹介してください。
Commented by よったま at 2015-08-11 09:25 x
おはようございます。
自然散策の会にコメントありがとう!
えっと思いました。川柳の人はほとんど知りません。
日帰り温泉に行く会で、心から楽しんでいます。
私のストレス解消です。

宮崎の方なんですね。
私は鹿児島の薩摩川内が故郷です。
11月に行けるので楽しみにしています。

★与生さんにも6月仙台で初めてお会いしました。
とっても若いです。

またよろしくお願いしま~~す。
Commented by h82261765 at 2015-08-11 10:47
詩ね
むかしは私も書いていたんだよな。
若者の月刊誌にも載せていたんだよな。
今は
あの時みたいな馬力がないらしく
書こうとしてもなんにも思い浮かばないもんな。
詩が書けるようになったら川柳にも
もっと若さが出せるはずなんだけど。
からだ同様脳もアップアップだわ(笑)
Commented by ringo-utahime at 2015-08-11 21:45
さくら草さん、ありがとうございます。
本多寿さんが、新聞連載された文章に加除訂正を加えて単行本化されました。

o(^o^)o
Commented by ringo-utahime at 2015-08-11 21:47
与生さん、コメントありがとうございます。
リクエストに応えて、ブログの本文に加筆させていただきました。

m(__)m
Commented by ringo-utahime at 2015-08-11 21:50
よったまさん、ご訪問ありがとうございます。

11月に薩摩川内の国文祭川柳大会でお会いできるのを楽しみにいたしております。

残暑厳しき折柄、くれぐれもご自愛くださいね。

(^_^)/
Commented by ringo-utahime at 2015-08-11 21:53
清展さん、ありがとうございます。

私も最近は川柳の宿題に追われていて、詩はずっとお休み中です。書きたい気持ちが、ときどき沸き起こるのですが、途中でエネルギー切れになってしまい、結局は仕上げるところまでいきません。

(((^_^;)
Commented by 月波与生 at 2015-08-11 22:11 x
詩の紹介ありがとうございます。

川柳を十句書いて詩になるようにしています。
2013年とやや古いけどわたくしの連作川柳
小さな応援歌

ががんぽのぼくに小さな応援歌

あと全部勝っても多分負け惜しみ

夢どおり生きちゃいないがやっとこせ

歩いても歩いても未だ点である

覚悟する大空を飛ぶ者はみな

善悪に曝した指で鶴を折る

てるぼうず雨のち雨もまた明日

Commented by ringo-utahime at 2015-08-11 22:33
与生さん、ありがとうございます。

川柳を連作で詠むと詩になりますね。

ますますのご健吟をお祈りいたします。

o(^o^)o
by ringo-utahime | 2015-08-10 23:44 | 書籍 | Comments(10)

2013年4月開設『りんご詩姫のブログ(新)』‥‥文芸川柳、フラメンコ、ボイストレーニング、パン教室、グルメ等々、趣味に生きる元気印「りんご詩姫」の〈気まぐれブログ〉。小さなスナックのママです。よろしく♡♡


by りんご詩姫