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『第九条』川柳

児童文学作家・高木敏子の処女作で自伝の「ガラスのうさぎ」を紹介。220万部を越えるベストセラーで、世界各国で翻訳されている。

高木敏子さんは昭和7年生まれ。
「私の証言を通して、戦争の無惨さや虚しさを、また生命の尊さを知って欲しいと願う。あの戦争で亡くなった大勢の人たちの代弁者となって、戦争を語り継いでいくことが、私に与えられた使命だと思う」。
戦争体験を語る講演を続けて来られたが、高齢により2007年8月を以て、講演活動を終了。
厚生省児童福祉文化奨励賞、日本ジャーナリスト会議奨励賞、エイボン女性大賞を受賞。


《あらすじ》
太平洋戦争末期、東京を標的とした米軍による大規模な無差別爆撃が繰り返し行われた。
1945年(昭和20年)3月10日の東京大空襲で、主人公の少女(敏子)は、母と妹を失う。父が営んでいたガラス工場の焼け跡には、ガラス細工のうさぎが歪んだ形で残っていた。
疎開途中の神奈川県二宮町で米海軍の機銃掃射に遭い、父もまた、敏子の目の前で命を落とす。
残された少女が涙を振り払いながら、懸命に生き抜こうとする姿に胸を揺すぶられる。

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※写真 金の星社〈フォア文庫〉の「新版 ガラスのうさぎ」。
1977年の出版作に戦時用語など語句の解説を増やして、2000年より発行。


薩摩川内市在住で川柳仲間の石神紅雀さんが、7月31日の朝陽小緑陰読書会で、私が推薦した「ガラスのうさぎ」の終盤〈太陽の文面〉の項目の一部を読んでくださったと聞き、嬉しかった。
抜粋して下記に記載。


1947年(昭和22年)5月3日、私はこの日を一生涯忘れないだろう。この日、日本国新憲法が施行された。新聞の中に書かれた全文の中で、私は第二章「戦争の放棄」という言葉に吸いつけられた。

第二章 戦争の放棄
第九条
①日本国民は、正義と秩序を基調とする国際平和を誠実に希求し、国権の発動たる戦争と、武力による威嚇又は武力の行使は、国際紛争を解決する手段としては、永久にこれを放棄する。
②前項の目的を達するため、陸海空軍その他の戦力は、これを保持しない。国の交戦権は、これを認めない。

この文面は、私にとって、まさに輝く太陽のように、まぶしく見えた。これなんだ、もう私たち国民は永久に戦争を放棄したのだ。よく、歴史は繰り返されるという。しかし日本の歴史はじまって以来、はじめて日本は外国に負けたのだ。連合軍という名の外国の軍隊が日本を占領した。たしかに、いくさに負けたことは、くやしいし、なさけない。そのうえ、たくさんの犠牲者を出した。
だけど、それによって、永久に戦争はしないということを憲法に定めることができたのだ。日本だけでなく、相手国もきっときっと、数えきれないほどの被害と、悲しみを受けたであろう。私のように両親を亡くした子もいるだろう。戦争によって利益をこうむった人は、ほんのひとにぎりの人たちだ。
私は生きているかぎり、この憲法を守りつづけたい。そして、私の次の世代、またその次の世代へと、この悲しみを伝えていきたいと思った。二度と戦争を繰り返さないために。



***************


課題『第九条』の川柳を集めてみた。

【第九条】
九条のコピーへ拍手する地球(松村 滋)
九条がはかなく見える国境(可井さくら)
九条のゆれへ脈拍多くなり(熊谷 岳朗)
九条のコピーしっかり取っておく(中川 晴海)
解釈が第九条を広くする(青鹿 一秋)
子が泳ぐ空だ九条守り抜く(齊藤由紀子)
九条を蔵入りさせてなるものか(望月 弘)
平和だな九条などと軽く言う(玉井たけし)
九条を迷彩服に包み込む(藤井冨美子)
九条を知らぬ魚がやってきた(吉富 廣)
子に渡すガラスケースの第九条(岩間 啓子)
九条に安く見られてきた命(石谷 恵子)
GWへ埋没嘆く第9条(中川 久邦)
子へ遺す道だ九条守る蟻(佐藤 榮子)
九条は知らず第九は知っている(田中 士郎)
九条が外されていた新刊書(谷藤美智子)
九条のお陰か寿命延びている(京増 京介)
護るのは女の仕事九条も(石川 雅子)
九条の重さ確り母なれば(泉 めだか)
九条を布石にしてる日本地図(近藤 辰春)
9条を守る敗戦身に沁みる(中沢ほう介)
九条をもてあそんでる分水嶺(貝田 誠作)
中東の風九条を裏返し(横溝 賢二)
九条の対策だけはありません(中前 棋人)
六十年凛たるロマン第九条(服部 和大)
九条が許さぬ鴻毛の軽さ(服部 和大)
九条がイラクの風に揺すられる(宮下 昌人)
九条と兵の墓あり僕のスケッチ(吉平 一岳)
九条の賞味期限が気にかかる(加藤友三郎)
九条の行方が母の気にかかる(松田 順久)
九条と不戦の誓い守りぬけ(佐藤 歓次)
九条ガ守ル平和ノアリガタサ(藤中 公人)
九条を世界に輸出して平和(稲井たつを)
九条へ涙の渦を忘れまい(遠藤 慶子)
九条を護る勇気よ湧いて来い(遠藤 慶子)
九条へひたひた迫る美辞麗句(遠藤 慶子)
九条を世界に配りたい平和(男武志津江)
九条に欲しいノーベル平和賞(古手川 光)
九条を火種にしたら許さない(中居 善意)
九条の枠を広げる鳩の群れ(二宮 茂男)
進軍ラッパ九条が地鳴りする(堀江 加代)
九条を鼻紙にする自衛隊(市後崎兼一郎)
九条が重荷になって来た日本(小久保虎夫)
九条の箍を世代で締め直す(小沢 淳)
九条の背景軍事基地が占め(藤田 雪魚)
九条も卑劣なテロに揺れ動く(坂 稲花)
九条に委ねています子のいのち(熊坂よし江)
戦争の恐さを知っている九条(佐藤 陸子)
空っぽになった憲法第九条(大島 脩平)
九条で揉める我が家の世界観(福士 哲夫)
九条の恵沢かしら長寿占め(齋藤 升八)
九条がくれた平和の灯を点す(佐藤権兵衛)
九条にサンドバッグが詰めてある(滝川ひろし)
九条の空に基地など似合わない(柏野 遊花)
九条の中身はいつも生きている(岩本 和夫)
九条を逆に入れる玉手箱(田 誠)
九条の背中が丸く見えはじめ(紅谷とら路)
憲法の九条にある平和基地(望月 弘)
九条の箱から鳩がいなくなる(小島 仁)
九条も尻込みしてるテロ事件(安田 直枝)
外交が揺れて九条脅かす(岡田コスエ)
九条の意義が問われたテロの闇(岡部 英夫)
九条に冷えた世代をレンジする(小林 八茶)
九条はズバリ平和を守る基地(北出 北朗)
九条を許すと墓地が割れてくる(富田 蘭水)
九条が箱から首を出したがる(舟木 俊夫)
九条に睨まれながらする給油(鴨田 昭紀)
九条と基地が同居の摩訶不思議(有海 静枝)
九条へ世代格差の陽がかげる(西畑寿々女)
九条を守る怒りの空がある(村山 浩吉)
天辺に置く九条の星あかり(太田黒尚之)
九条の狭間で揺れる基地の街(赤山 恵子)
九条の力信じていたい明日(高崎 揚子)
九条の平和だれかがひき離す(福原 始)
九条はお荷物ですか派兵崘(齊藤由紀子)
声に帆を上げ九条を守りきる(齊藤由紀子)
九条を燻製にする多数決(小林信二郎)
九条をそーっと次世紀へ運ぶ(津田 暹)
子の寝息第九条を考える(吉永 亜弓)
九条を七割強の民が支持(高津 幸雄)
九条のお色直しはもうご免(横路 福夫)
九条が揺れるとアジア姦しい(君塚 茂)
九条という名の鍵をかけている(嶋澤喜八郎)
美しい国九条がでんと有る(宮内みの里)
改憲論悪夢の舞台戻りそう(沢田 抱石)
ふるさとは戦争放棄した日本(大久保眞澄)
いつまでも戦争放棄ふところに(野沢 省悟)
銃を持つそんな自由は要りません(清野 玲子)
戦争放棄 彬・多喜二を礎に(木本 朱夏)
戦争放棄、戦争責任放棄ではない(渡辺 隆夫)
九条の未来案じる千の風(さわだまゆみ)
九条を抉れば鳩がうずくまる(さわだまゆみ)



拾ってみれば、憲法第九条を詠んだ句の多さにびっくり。類想句も目につくが、終戦記念日を前にして、九条の重さと意味を再度考えて欲しいと願う。


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Commented by 月波与生 at 2015-08-14 20:22 x
正直に書くと、戦争反対、九条を守れ、をことさら川柳という必要がどこまであるのかな、とやや懐疑的なんですよ。
時事川柳があるじゃないか、といわれますが、最近の大会は、護憲、反原発を書くと抜けやすいのか、そんな川柳ばっかりで、政治集会にでも来たのかと違和感を感じることもあります。
Commented by ringo-utahime at 2015-08-14 21:31
与生さん、こんばんは。お疲れ様です。
コメントありがとうございます。

私自身、時事吟は好きではないし、得意でもないから、ほとんど詠みません。
それに、九州の大会では、あまり時事吟は抜けていない印象がありますから、政治集会のようだと感じたこともありません。
やはり、土地柄で違うのでしょうね。

今年は、友人が、ナガサキの原爆追悼式に参加しました。被爆2世で、次々と発症する癌と闘いながら生きている女性です。お母様は白血病で亡くなられたので、母子2代で原爆の被害者と言えます。

戦争を知らない世代ですが、日本人として毎年8月だけは立ち止まって考えたいと思っている私です。

m(__)m
Commented by 月波与生 at 2015-08-14 22:37 x
戦争は反対だし、核のゴミの処理が現状不可能な原発も反対、そんな人は多いでしょう。東北は福島がありますからなおさらです。ただ、それをいうのに川柳は本当に適した器なのか? て、いうことですね。
鶴彬の精神はどうした、というかもしれませんが、それは歴史を振り返ると彼の川柳があるのであって、戦前戦中彼のように行動できた柳人は他にいなかったのです。
時事川柳とユーモア川柳は、川柳の両輪であることは認めた上でいいますが、今の九条反対もの川柳は空疎だと思えてなりません。じゃどういうプロテストを川柳でするのか?それが、これからの柳人、わたしたちが考えねばならないことかもしれません。
Commented by ringo-utahime at 2015-08-14 23:23
与生さんは真面目で熱い方ですね。
一緒にお酒を飲んで、たくさんお話してみたいです。

たしかに、与生さんのご意見も一理あると思います。
果たして「これから先の川柳は、どうあるべきか」を真剣に考えている人が、どれくらい存在するものなのでしょうか?

反面、基本的に「川柳は、こうあるべきだ」と括りたくない気持ちもあります。
表現の自由を尊重して、いろんな形とジャンルの川柳があっても良いのではないかなとも考えます。
「特別な何かに縛られたくないから、自由に表現したいことがあるから、川柳を詠む」という方もたくさん居るのではないでしょうか。

詠みたい川柳は人それぞれでしょうし、鑑賞する側の好き嫌いもいろいろ………それで良いのではないかなと。

私自身は、与生さんのような現代的でお洒落な表現の川柳に憧れますが、実際には凄く難しくて喘いでいます。
まだまだ私の人間としての器が小さい証拠なのでしょうね。とほほ………。

(^_^;)
Commented by 月波与生 at 2015-08-17 00:23 x
コメントが付いていたとは知りませんでした(;^_^A遅いレスになります。
例えばこれが俳句だというものには芭蕉の句があります。例えばこれが短歌だというものには万葉集があります。君が代もありますね。しかしながら川柳にはそういうものがありません。無いからこそ間口だけは広い。伝統も川柳、詩性も川柳、サラ川柳も川柳、、、。ではないだろう。
川柳はそろそろ取捨選択の時期に来てると思いますよ。
by ringo-utahime | 2015-08-12 23:29 | 川柳(課題別) | Comments(5)

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