「風花抄」安田翔光川柳句集
2016年 09月 30日
127ページ。
シンプルな装丁に心が安らぐ。
300句あまりを掲載。
序・破・急の三章に分けられる。
大太鼓 みんな黙れという響き
ややあって 叱りすぎたとおもう父
笑えない喜劇 泣けない悲劇だな
トランペッターの指は孤独に満ちている
酔いどれを迎えてくれる 珠のれん
星ひとつ ふたつ 数える肩車
戯れに「異国の丘」は 歌うまじ
気の弱いトマトで 捥がれても熟れる
雨に泣き 雨に躍りて 農奴かな
応えてはならないものに 花言葉
泣くために 人は生まれてきたのです
眠れないわけは 拳が固すぎる
屋台曳く男を見たら 追い越すな
女ひとり 騙しおおせぬままに 春
来世まで誓い 悲喜劇はじまりぬ
トラックを飾る孤独な 男たち
バンザイの形で 虫が死んでいる
寝たきりを看る 贖罪をするように
黒髪の長さは 業の 深さかも
人の世の 節目節目にある 涙
灯を点けてごめんよ 泣いていたんだね
つみぶかい約束をして 軽い足
何事もなかったことにする 化粧
敗けてきた男の膝が好きな 猫
菩薩とも見まがう 臨月の 娘
使用済みテレカが秘めているドラマ
目的がない旅人で 混む 駅舎
はかりごと 幻想曲を聴きながら
老いたりといえども 現役の不良
自分史の赤いページに棲む 女
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《著者略歴》
安田 翔光(やすだ しょうこう)
昭和14年生まれ、本名・昌幸
昭和33年 八ヶ岳経営伝習中央農場本科卒業(現・八ヶ岳中央農業実践大学校)
昭和48年 番傘一般近詠初投句
昭和51年 番傘川柳本社同人
昭和53年 本名から将幸に改号
昭和56年 稲井電子工業㈱入社
昭和59年 四国柳壇(四国新聞)ゲスト選者
平成 3年 将幸から翔光へ用字変更
平成 8年 四国柳壇ゲスト選者
平成10年 川柳句集「風花」発刊
平成12年 ㈱日本グレーン研究所へ再就職し勤続中
現在 祥柳舎代表
(一社)全日本川柳協会 個人会員
『風花抄』
2016年6月26日 初版
著者/安田 翔光
発行人/松岡 恭子
発行所/新葉館出版
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コメントありがとうございます。
やっぱり、その土地土地で、作風が変わるものなのでしょうか?
翔光さんの句、わかりやすくて、やさしくて、時にはちょっと色気もあって、良いですよね。
(*^^*)