「川柳番傘12月号」
2016年 12月 06日
「川柳番傘12月号」を紹介。144ページ。
表紙絵は「忘年会」。
~同人近詠(田中 新一選)より一部抜粋~
《巻頭》
余命宣告されたおとうと落ち葉焚く
木犀匂うふりむく坂はモノトーン
泣ききってさあ始めよう終の章
(桜井/太田のりこ)
レコードの溝にデュランが立ち上がる
抵抗の詩人と同化した時代
オチのない人生なんて笑えない
(奈良/菱木 誠)
どうせなら笑って生きる眉を引く
そんな夜も越えてきたのか花の芯
さよならの色でしっかり玉結び
(宮崎/中武 弓)
ふりむけば足跡乾くカタツムリ
ほどほどにできぬ日もある酒の席
恋人のまんまで秋をやりすごす
(宮崎/間瀬田紋章)
猫には猫の苦労があって爪を研ぐ
朗報になんで口止めついている
穏やかに積もう火種は消したふり
(薩摩川内/石神 紅雀)
橋渡りきったら新しい私
月を買う話が漏れるウサギ小屋
偏った私を笑うリトマス紙
(佐賀/真島久美子)
脳トレとも思う草稿のマス目
居酒屋へ孫に呼ばれて酌み交わす
誕生日ごとに深まる酒の味
(香川/安田 翔光)
雲の心も抱き寄せてみる冬ごもり
冗談の下手な息子の風の歌
傷口へ父母の思い出二つ三つ
(都城/主税みずほ)
夕日浴び信号待ちの救急車
TPP何があろうと牛のそば
(宮崎/岩崎 哲)
巡り会い牛にお世話になってます
うしろにも目のある妻がいてくれる
(宮崎/中武 重晴)
アート掻き立てる一個の柿のいろ
遠心力信じる自転車とわたし
(福岡/冨永紗智子)
虫が鳴く今日一日は地震がない
負の遺産仕分けしているごみ袋
(熊本/黒川 孤遊)
まだ少し仕組むわたしに詩が出る
生きられる感謝いのちを抱きしめる
(別府/小代千代子)
非難所は眠る魂目を醒ます
ひと掬いの波に崩れる砂の塔
(宮崎/西岡 南風)
~誌友近詠(森中惠美子選)より一部抜粋~
《巻頭》
ひと休みしたら欲など消えていた
あの人はしたたかだけど憎めない
旅先の祭りと出合う国自慢
(名古屋/冨田 末男)
老人力燃える夕陽を身に浴びて
毛糸編む冬の足音聞きながら
金が要る浮世の義理の裏表
(札幌/小林 宥子)
にんげんの仮面がずれる暮れの街
一年の埃を払う魔女聖女
介護録だけ残される十二月
シャッフルの音のジングルベル響く
用途不明のネジが溜まってゆく師走
(宮崎/さわだまゆみ)
草もみじひとり娘も嫁に行く
モノクロの街に青春育てられ
折り紙が未知の世界へ連れてゆく
(宮崎/永友 淳子)
空腹も耐えてスクラム組んだ過去
本心をさらして世間広くなる
井の中を出てから五欲加速する
(宮崎/日高 賀邁)
老いの知恵格安ですがいかがです
若い血は大歓迎と献血車
二人よし一人もよいと酒が言う
(鹿児島/馬場ナオミ)
傷だらけを温めるなら秋夜長
ひとつしかない答えなどつまらない
ふたりいて心にひだまりができる
(薩摩川内/春田あけみ)
減反を孤高の案山子守りきる
真っ赤な夕日妻と眺めた日を偲ぶ
(宮崎/富田 博)
まだ風と暮らしているか母の文
たっぷりの恩真っ直ぐな樹に育て
(宮崎/肥田木聞明)
置き去りの拉致無常にも除夜の鐘
性悪な女優二世を隔離する
(鹿児島/松本 清展)
◆前月号近詠鑑賞
〈同人の部〉(東京/おかの蓉子)より
着ぐるみの中で泣きます怒ります(真島久美子)
深呼吸三回反論は静か(冨永紗智子)
地震の痕名月のシャワーがそそぐ(黒川 孤遊)
〈誌友の部〉(福岡/益永 克之)より
老いの手に小さな夢を転がせて(小林 宥子)
青信号リズムに合わせ通りゃんせ(平本つね子)
チャレンジャーまだ伸び代を抱いている(永友 淳子)
★課題吟「自由」(各務原/新海 照弘選)より
自由化の波にのまれてゆく弱者(安田 翔光)
莫大な金を自由にする夢想(日高 賀邁)
足元にあった自由という踏み絵(真島久美子)
存分な自由孤立が深くなる(冨永紗智子)
自由人気取り手放さないスマホ(さわだまゆみ)
自由時間貧乏症がうろたえる(真島美智子)
自由ですどこで死のうと生きようと(小林 宥子)
托鉢の風に吹かれる山頭火(馬場ナオミ)
自由ではなかった政治活動費(松本 清展)
世界一住みたい国にある自由(茶谷 好太)
★イメージ吟〈No.14〉(大津/小梶 忠雄選)より
この中の一つ私の守り札(山下 華子)
運命の女神は僕をすり抜ける(菱木 誠)
ここまでは礼儀正しいけんか凧(松本 清展)
あまだれが四角に見える日のわたし(冨永紗智子)
たんぽぽの種が四角になりました(春田あけみ)
散らかしたまんまなのねえお母さま(馬場ナオミ)
勢いにつられ座布団とまらない(西村 正紘)
眠くなるしあわせ空を飛んでます(若山 宗彦)
★友の会「変わる」(一宮/小川 加代選)より
個性的良くも悪くも変わり者(平本つね子)
日常の景色も変わる癌告知(さわだまゆみ)
変身をしすぎ自分に戻れない(太田ちかよし)
吹っ切れたようだ瞳が澄んでいる(井芹陶次郎)
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詳しく丁寧にUPしていただき読みやすいです。
ありがとうございます。
冷え込んできました。
風邪を引かないようにネ。