りんご詩姫のブログ(新)

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2013年4月開設『りんご詩姫のブログ(新)』‥‥文芸川柳、フラメンコ、ボイストレーニング、パン教室、グルメ等々、趣味に生きる元気印「りんご詩姫」の〈気まぐれブログ〉。小さなスナックのママです。よろしく♡♡

カテゴリ:川柳本( 17 )

「宮本武蔵」「新・平家物語」等で有名な作家吉川英治(1892.8.11~1962.9.7)は二十歳前後の頃、吉川雉子郎〈きじろう〉の名で川柳を詠んでいた。

柳号の「雉子郎」は〈焼け野の雉子の子を思う親心をしのんだもの〉で、吉川英治はかなりの親思いの青年だったらしい。

ちなみに、私は英治の名言「朝の来ない夜はない」が好きだ。

雉子郎の川柳を少し紹介したい。

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清盛も太閤も居ぬ京淋し

古本を売りて富みたる夕心

何尺の地を這ひ得るや五十年

貰はれて行く子に袂ただうれし

駈落は金の無くなる所まで

あめつちの中に我あり一人あり

死ぬんだと云へば女房泣きやあがる

新内よ流せ廓の雨上り

両国の美しい夜に風邪を引き

夏よろし君が翡翠の玉のかげ

生きぬれば蝶にも汗はありぬべし

小鳥店買はれ行くのと泣きかはし

その女八百屋に見たる夕かなし

渡海てふ火宅の中に油蝉

きりぎりす半分泣いて風が吹き

珈琲の香にさへ酔ひぬ恋すれば

うれしさに憂きに鬼灯吹く女

かにかくに吾が朝顔もうすれ行く

気が違ふほど夕焼けぬ夕焼けぬ

後に読む其の夜の小さき名刺の名

飯が旨いに止まれり俺の秋

風が出て来たよと下駄をはいた時

貧しさもあまりの果は笑ひ合ひ

思はれもする柩の中の静けさ

うら寒いこころに息が見えて来る

一人喰ふ膳にぽつんと紅生姜

どん底の人に不思議な顔の光沢

世の中におふくろほどのふしあはせ

生きようか死なうか生きよう春朧

おふくろは俺におしめもあてかねず

櫛一つ無くして帰るすみだ川

湯屋の前通れば晩い桶の音

仏壇はあとのまつりをする所

売れて居るところを見ない骨董屋

真ん中を歩く都の午前二時

落ちぶれてまだ鍵だけをたんと持ち

金銀の中で貧しき飾職

なつかしき日を張り板に張りつづく

このさきを考へてゐる豆のつる

春の夜の立ち聞きゆるせ女部屋

春をただ男やもめのふところ手

悶々と蠅を叩いてゐたりけり

年忘れおまへは帰る俺は寝る

この道でいつぷくしよう小春かな

子に甘く女房に甘くあられ酒




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by ringo-utahime | 2017-03-17 17:50 | 川柳本 | Comments(4)
香川県在住の安田翔光さんの川柳句集「風花抄」を紹介。

127ページ。
シンプルな装丁に心が安らぐ。
300句あまりを掲載。
序・破・急の三章に分けられる。

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大太鼓 みんな黙れという響き

ややあって 叱りすぎたとおもう父

笑えない喜劇 泣けない悲劇だな

トランペッターの指は孤独に満ちている

酔いどれを迎えてくれる 珠のれん

星ひとつ ふたつ 数える肩車

戯れに「異国の丘」は 歌うまじ

気の弱いトマトで 捥がれても熟れる

雨に泣き 雨に躍りて 農奴かな

応えてはならないものに 花言葉

泣くために 人は生まれてきたのです

眠れないわけは 拳が固すぎる

屋台曳く男を見たら 追い越すな

女ひとり 騙しおおせぬままに 春

来世まで誓い 悲喜劇はじまりぬ

トラックを飾る孤独な 男たち

バンザイの形で 虫が死んでいる

寝たきりを看る 贖罪をするように

黒髪の長さは 業の 深さかも

人の世の 節目節目にある 涙

灯を点けてごめんよ 泣いていたんだね

つみぶかい約束をして 軽い足

何事もなかったことにする 化粧

敗けてきた男の膝が好きな 猫

菩薩とも見まがう 臨月の 娘

使用済みテレカが秘めているドラマ

目的がない旅人で 混む 駅舎

はかりごと 幻想曲を聴きながら

老いたりといえども 現役の不良

自分史の赤いページに棲む 女




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《著者略歴》

安田 翔光(やすだ しょうこう)

昭和14年生まれ、本名・昌幸
昭和33年 八ヶ岳経営伝習中央農場本科卒業(現・八ヶ岳中央農業実践大学校)
昭和48年 番傘一般近詠初投句
昭和51年 番傘川柳本社同人
昭和53年 本名から将幸に改号
昭和56年 稲井電子工業㈱入社
昭和59年 四国柳壇(四国新聞)ゲスト選者
平成 3年 将幸から翔光へ用字変更
平成 8年 四国柳壇ゲスト選者
平成10年 川柳句集「風花」発刊
平成12年 ㈱日本グレーン研究所へ再就職し勤続中
現在 祥柳舎代表
(一社)全日本川柳協会 個人会員



『風花抄』
2016年6月26日 初版
著者/安田 翔光

発行人/松岡 恭子
発行所/新葉館出版


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by ringo-utahime | 2016-09-30 01:01 | 川柳本 | Comments(2)

日川協加盟柳社推薦句集

『平成柳多留・第19集』(平成28年4月1日発行)に収められている「日川協加盟柳社推薦句集」より、262の川柳吟社のうちのごく一部を抜粋して紹介。


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【いわて紫波川柳社】
やさしさの真ん中にいて動けない(西 恵美子)
もう少し生きよう少しなまけよう(生内アイ子)
かぶと虫いたところまで旅をする(月波 与生)

【楽しい川柳会】
マラカスのリズム艶歌もラテン調(古澤 米正)
胸の中消せない人が若く棲む(豊田 初枝)
傷ついて人は詩人になっていく(太田ヒロ子)

【東葛川柳会】
お祭りでいいよ 私のエンディング(江畑 哲男)
本当の夫婦黙って許し合う(大戸 和興)
カップの底に残るシュガーと冷めた恋(上田 正義)

【川柳白帆吟社】
原罪を伏せて轍を深くする(やまぐち珠美)
無言坂仏の指にたどり着く(清水香代子)
コラーゲン足し未来着る運不運(布施 ちえ)

【東京みなと番傘川柳会】
いれば良い峠を越えてきた夫婦(平田 耕一)
音のない家にも朝がやって来る(内田 厚子)
門灯は母の色して待っている(米本 卓夫)

【山梨県川柳協会】
改革の波に逆らう田の案山子(大村あさ子)
新しい貌でマイナンバーが来る(小林信二郎)
頂点の椅子を育てて一人住む(平井美代子)

【やしの実川柳社】
草むしる手に草の気が付いてくる(かしわぐま光代)
寂しいと引っ張り出してくる昭和(前田須美代)
辞書引いて書いた漢字がぎこちない(岡田コスエ)

【全国郵政川柳人連盟】
駄菓子屋に躾も売っていた昭和(宮本 信吉)
告白をされた公園こそ名所(青砥たかこ)
母ちゃんのお帰りパッと灯が点る(安田和楽志)

【大阪川柳人クラブ】
診察券三枚名医に巡り合う(磯野いさむ)
なんやかや言うても母は美しい(板尾 岳人)
迷わずに遺産残さず身を軽く(本田 智彦)

【豊中川柳会】
スタートへもう迷ったりなどしない(森口 美羽)
生き上手巧みに顔を使い分け(洲崎レイコ)
肩書きを捨てた男の目はソフト(上山 堅坊)

【番傘川柳本社】
子の宿になろう元気でいなければ(岩田 明子)
純情な頃のわたしかさくらんぼ(上野多惠子)
ひびくもの探しつづけている旅路(植野美津江)

【番傘わかくさ川柳会】
プライドも神が認知にしてくれる(西 美和子)
ピカピカの食器ストレス溜めている(油谷 克己)
夕立が止んで落ちてるイヤリング(坂本 星雨)

【楽生会】
家族には内緒イチジク食べている(神野きっこ)
国のこと友と語らう雲は秋(徳永 妙子)
温泉に浸かると哲学者になる(上野 楽生)

【ふあうすと川柳社】
封を切る一気に君が溢れ出す(山下 華子)
満月の蟹しなやかに脱皮する(木下 草風)
モカの香の中に女を沈ませる(板東 弘子)

【大川川柳会えんのき】
ルーツどうあれ栄枯盛衰風化する(柿添 花子)
枯れてたまるか俺には俺の空がある(江口 達義)
適当を許さぬ祖母の定規です(江頭 勝彦)

【久留米番傘川柳会】
抜けやすい耳で法話を聴いている(林田 修)
履きなれた靴を結局履いて行く(森田佐代子)
いつもニコニコこれが私の武器だから(松永 千秋)

【川柳葦群】
鳩尾のあたりに今も蝉の声(清水美智子)
天仰ぐとき人間は無防備に(渡辺 桂太)
好きだった人の病を聞いて冬(さわだまゆみ)

【福岡県川柳協会】
満席のひとりに届けラブソング(岡田かすみ)
散らかった部屋でロマンを産む作家(小崎 国雄)
言霊の煌めき明日のものがたり(石田 酎)

【佐賀番傘川柳会】
ひとときを心豊かに趣味の会(江川寿美枝)
カンナ咲く七十年の黙祷へ(真島美智子)
命名の墨大海へ泳ぎ出す(横尾 信雄)

【川柳噴煙吟社】
七十年戦後は一度だけでいい(吉岡 茂緒)
春ですね老いも一色足してみる(安永 理石)
老いたくはないが月日が止まらない(宮本美致代)

【大分県番傘川柳連合会】
百までの余生をどんな色で咲く(猪俣 呑童)
焼くまでの命この世の野に遊ぶ(小代千代子)
まあだだかいぐんぐんぐんと母を蹴る(富永美江子)

【宮崎番傘川柳会】
悔しさをばりばりばりと食べている(中武 弓)
負け戦認めぬままに枯れるバラ(さわだまゆみ)
手の内のときめき見せた冬の虹(主税みずほ)

【鹿児島川柳協会】
三食を足りて雑事の多いこと(春野はるの)
安保法可決日記に赤く書く(玉利 清玉)
もうひとつ命欲しくて海を見に(坂元しげき)

【川柳くれない】
ラフティーと妻の笑顔があれば良い(高良 秀光)
早起きが出会いとドラマ連れてくる(上原とよ子)
人間にしっぺ返しをする自然(大田かつら)



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by ringo-utahime | 2016-08-11 14:28 | 川柳本 | Comments(0)

合同句集「世詩凡」

宮崎実業クラブ川柳同好会「世詩凡」(井上連図会長)の創立15周年を記念して発行された合同句集「世詩凡」を紹介。
108ページ。江南書房印刷。

17名の会員が、各20句の川柳と、原稿用紙1枚程度の随筆を寄せている。

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「昭和」
昭和史の竹槍、軍歌、特攻機
右の風民の命を軽くする
老々介護最終章にある試練
(井上 連図)

「藁」
人間を掻き回してる黒い舌
老々介護藁一本も切れかかる
わたくしのレベルで人を裁けない
(吉井 楼太)

「らしさ」
アトムも僕も夢を見ていた原子力
〇点も1〇〇点もある人生だ
来世でも再び逢える切符持つ
(櫨本 凡樹)

「めぐるめぐる夢」
バランスを良くする為の妥協点
言葉尻とられて和解遅らせる
結び目がほどけぬままの代理妻
(緒方 サブ)

「泣くもんか」
巣立つ子の躾をほどく春の駅
昭和史のど真ん中には父母の杭
人間を洗い晒して陽は真上
(川崎 敬女)

「再生」
ごめんねの一言言えぬままの朝
決め台詞持たぬ男の二日酔い
肯定も否定もしない空の青
(山口 陽花)

「方向」
正月が過ぎて方向見失う
お湯割がニュースの度に濃ゆくなる
結び目は損得ずくで固くなる
(新坂 昇降)

「玉ねぎ」
土壇場で味方したのは神だろう
にんげんを洗う真水が濁りだす
玉ねぎを剥くたび貴方みえてくる
(細山田 吐夢)

「出発」
傷ついた言葉をそっと脱いで寝る
栄光の角にぽつんと水たまり
実る穂の形になって母は老い
(肥田木 聞明)

「師」
孫が来て夫婦喧嘩に水が入る
擦り切れた財布に母の汗を見る
仰ぐ師の薫陶胸に一歩出る
(黒木 海舟)

「只管」
アンテナを外し仏の顔になる
秘めた芽が世界を変える力持つ
墓石を揺すってみても父は来ぬ
(松田 午酔)

「応援歌」
父に似る次男ばかりを叱る母
孤独死が遺す華麗なプロフィール
縁談が進み胎児もよく動く
(有馬 吟友)

「笑う」
笑い皺四角い顔が丸く見え
まだまだと姑のブラは風に揺れ
美味しさを味わい尽す親の臑
(中村 恵礼樹)

「感謝」
雨宿り密かな出会い感謝する
家族との絆が鍋のかくし味
旅先の出会いポッケに仕舞い込む
(内野 童里夢)

「出合い」
輝いた女が探す着地点
傘を差す角度で分かる惚れ具合
ほどほどの嘘と笑いのクラス会
(山下 唱悦)

「復興を願う」
歌に込め復興願う花は咲く
幸せの形を地蔵さんに問う
逆境で赤子の笑みに救われる
(籔 花泉)

「転機」
勝ち負けを問うて心のすきま風
洗っても落ちない染みが一つある
絶妙なバランス保つ夫婦仲
(藤山 ジョイ)


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by ringo-utahime | 2016-06-21 17:52 | 川柳本 | Comments(4)
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ひと月前の2016年1月25日(月)22時14分、静岡在住の川柳作家、加藤 鰹さんが、すい臓癌のため逝去された。51歳。

余命3ヶ月の宣告から約半年の間、延命治療は望まず、最期まで全国各地の川柳大会へ飛び回っておられた。

本人の強い意思により、葬儀告別式は行わず、ご家族立ち会いのもと火葬納骨を済まされたらしい。

明るくて男らしい憧れの鰹さんに、一度もお会いできなかったことが、本当に残念でならない。

心よりご冥福をお祈りいたします。合掌。



『加藤鰹川柳句集 かつぶし』
(新葉館出版、2015年11月17日初版発行)より


ディスイズアペンさあ夢を綴ろうよ

十八の僕がハチ公前にいる

トーフ屋のラッパで終わるかくれんぼ

ドンガバチョ僕が泣き虫だった頃

武勇伝またかと聞いているししゃも

何故だろう近ごろ妻が美しい

明日も逢う別れ話をするために

花水木ここで生まれてここで死ぬ

妻よ子よ俺は負け組だよゴメン

すきま風入らぬように抱きあおう

ひまわりの振りがしんどい時もある

よく来たね君は去年のツバメかい

君はもう寝たかな窓の外は雪

うみにふる雪よいのちのはかなさよ

めぐり遇おう今度生まれて来る時も




【加藤 鰹】
1964年 静岡市生まれ
1990年 地元SBSラジオをきっかけに川柳を始める
1991年 浜柳会入会
1992年 静岡たかね川柳会入会
1999年 第4回オール川柳新人奨励賞受賞
2001年 静岡たかね川柳会代表就任
2002年 NHKカルチャー静岡校川柳講師着任
2003年 第1回川柳マガジン文学賞準賞受賞
2004年 全日本川柳栃木大会選者

静岡たかね川柳会代表
葵川柳倶楽部代表
いわて紫波川柳会会員
全日本川柳協会常任幹事


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by ringo-utahime | 2016-02-25 17:25 | 川柳本 | Comments(2)

「川柳歳時記・四」

2015年4月15日発行の「川柳歳時記・四」(新葉館出版)を紹介。
課題1895題、秀句5454句。519ページ。1600円+税。

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◆題「一週間」西岡 南風選(川柳みやざき)
一週間過ぎれば恋をする喪服(まゆみ)
週はじめ企業戦士は面かぶる(淳子)
曜日知る必要もなく日々ゆたか(カツ子)

◆題「裏」古賀麗子選(川柳葦群)
人情の機微裏見せることも技(吉開 綾子)
正論の裏に隠れている本音(石田 酎)
ひょっとこの仮面の裏の涙あと(梅崎 流青)

◆題「追い風」石神 紅雀選(川柳火のしま)
信じようとても無口な追い風だ(真島久美子)
女ひとり追い風は今帆は斜め(冨永紗智子)
追い風へ線引き直す青写真(大窪りんず)

◆題「片隅」永友 淳子選(川柳みやざき)
おんな先生心の隅に六十年(龍司)
老舗屋は昭和の路地の片隅に(雄三)
片隅に置いても光る知恵袋(静江)

◆題「サイズ」真島 清弘選(川柳ふんえん)
帰港した巨大タンカー孫の靴(棧 舜吉)
堂々とわたしを生きるLサイズ(村岡 寿子)
ジャンボではないがおっぱい良く出ます(中原たかお)

◆題「塩」野村 賢悟選(川柳葦群)
善人の顔して並ぶ塩むすび(高田 泰夫)
地の塩となるはずだった獄中記(速川 美竹)
塩加減やっと自分を取り戻す(内田 久枝)

◆題「失恋」真島久美子選(川柳あやめ)
そっとしておこういい恋掴むまで(伸江)
身を焼くほどの恋は捨おく外はない(乱)
線香花火ぽとりわたしの恋ぽとり(紗智子)

◆題「新品」山下 努選(川柳火のしま)
新品のスーツから夢溢れ出す(外園ピアノ)
おさがりが新品になる母の技(篠原 郁代)
妥協せぬ風を待ってる新コート(中村エレキ)

◆題「そよそよ」石神 紅雀選(川柳火のしま)
青い実へ風はそよそよ噂する(桜木 えり)
恋かしらそよ吹く風が歌ってる(平田まりん)
そよ風に素直になってみませんか(春田あけみ)

◆題「東海道」〈時代吟〉加行 大洋選(汎)
参勤交代心はお江戸東海道(岩崎 哲)
早馬が駆けて赤穂の幕が開く(伊福 保徳)
弥次喜多も馬子唄うなる浮世風呂(高峰 桂介)

◆題「逃げる」緒方 正堂選(川柳ふんえん)
その場から逃げても同じ陽が昇る(あじさい)
あの頃の君に会いたい鬼ごっこ(なお美)
逃げ出した故郷に未練が滲み出る(萬理)

◆題「望む」真島美智子選(川柳むつごろ)
美代ちゃんも外へ出たいと春を待つ(信雄)
ノックしてみよう望みが叶うかも(信雄)
手のひらの望みときどき握り締め(和子)

◆題「平均」荒砂 和彦選(川柳みやざき)
学校に個性眠らす平均値(吉井 楼太)
不揃いの美学許さぬ計算機(さとう亜夢)
平均値比較社会の拠りどころ(倉迫 一朝)

◆題「虫」大河原信昭選(川柳葦群)
夏終る怠惰な虫を肥らせて(堀 久美子)
封印を解けばうごめく虫すだく(小林 宥子)
柔順な蟻一匹の猜疑心(中川しのぶ)

◆題「リコール」深道 岳柳選(川柳火のしま)
リコールは破滅への道プロローグ(青柳)
リコールに出したい妻がでんと居る(芙蓉)
もう駄目とリコール前に決めた知事(清明)



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by ringo-utahime | 2015-10-06 17:15 | 川柳本 | Comments(4)


手と足をもいだ丸太にしてかへし
(鶴 彬)




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柳人・鶴 彬(つる あきら)
1909年1月1日~1938年9月14日。享年29。
石川県河北郡高松町(現かほく市)生まれ。本名、喜多一二(きた かつじ)。
日本のプロレタリア文学の影響を受けた代表的な反戦川柳作家。


川柳という人間・社会を映し出す十七音の鏡による表現力と出遭い、しだいに川柳とは、社会とは………という真理を求めた鶴彬。全体主義の時代は、それを許さなかったが、鶴彬が川柳作品と柳論に遺した叫びは、時代を超えて川柳への情熱を伝える。



~「川柳人」281号(昭和12年11月15日)より~

高梁の実りへ戦車と靴の鋲

屍のゐないニュース映画で勇ましい

出征の門標があってがらんだうの小店

万歳とあげて行つた手を大陸へおいて来た

手と足をもいだ丸太にしてかへし

胎内の動きを知るころ骨〈こつ〉がつき



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写真は、「鶴彬の川柳と叫び」尾藤一泉編(新葉館出版)の表紙。


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■自由と平和のための京大有志の会
「声明書」

戦争は、防衛を名目に始まる。
戦争は、兵器産業に富をもたらす。
戦争は、すぐに制御が効かなくなる。
戦争は、始めるよりも終えるほうが難しい。
戦争は、兵士だけでなく、老人や子どもにも災いをもたらす。
戦争は、人々の四肢だけでなく、心の中にも深い傷を負わせる。
精神は、操作の対象物ではない。
生命は、誰かの持ち駒ではない。
海は、基地に押しつぶされてはならない。
空は、戦闘機の爆音に消されてはならない。
血を流すことを貢献と考える普通の国よりは、
知を生み出すことを誇る特殊な国に生きたい。
学問は、戦争の武器ではない。
学問は、商売の道具ではない。
学問は、権力の下僕ではない。
生きる場所と考える自由を守り、創るために、
私たちはまず、思い上がった権力にくさびを打ちこまなくてはならない。


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by ringo-utahime | 2015-07-22 23:51 | 川柳本 | Comments(4)

川柳句集「炎」松村華菜

6月21日(日)の熊本噴煙川柳大会の参加者に贈られた松村華菜さんの川柳句集「炎(ほむら)」(飯塚書店、2015年7月1日第1刷発行)を紹介。

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26年前の8月の暑い日、突然の交通事故で夫を亡くされた松村華菜さん。絶望と喪失感と悔しさの中で、何かに縋りたくて、ふらりと導かれるように入ったのが川柳の世界だと言う。以来、不思議な川柳の魔力に引かれ、舟を漕ぎ続けてこられての25年………華菜さんの内なる炎が詰まる375句は圧巻。
情熱的な紅色の表紙に、平田朝子さん(噴煙吟社主宰)書の題字も素敵。


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走り雨悲は突然にやって来る

美しい約束が散るももさくら

眠ってくれぬ記憶の中にあるほむら

もう桃は流れて来ない冬の川

風花の今日は行き場のない孤独

一瞬の炎えた記憶で生きられる

魚拓から逢いたいひとの笑い声

叱ってくれる月も今夜はまだ出ない

走らねばならぬならぬと貨車が行く

あなた以上のひとに会えない海の蒼

もうすこし噛ってみたい骨だった

淋しさは言わぬ部屋中ジャズで埋め

書きなぐる詩は悲しい独り言

ひまわりの裏は渇きに耐えている

消し壺の中にときどき風の音

豆の蔓おまえも支え欲しいのか

帽子目深に今日は人間から逃げる

修正液の下の涙が乾かない

まっすぐな線を描いて狂えない

人間の匂いたっぷりさせている

風船を飛ばす独りもいいもんだ

すこし血が濃すぎるようでサラダ噛む

夢食べて淋しさ食べてまだこの世

身の内を奔るものあり紅い月

待つという快感がある梅香る

佗助や脆い縁のひとといる

狂い鳴く蝉は幸せかも知れぬ

夜桜や危ういものと響き合う

人間の深いところに棲む獣

遠花火赤いかけらがまだ光る

夕やけ小やけ嘘は真っ赤につき通せ

下車できる駅はいくつもあったはず

冬の絵を明日はひらりと出て行こう

りんごが沁みる少しいい子になりすぎた

茄子の花人を羨むことはない

浮雲の自由鍵穴から見つめ

人間が好きでやさしい嘘をつく

振り向いて欲しくてときに吠えてみる

すこしだけ酔っております路地裏で

埋め立て地海ほおずきの音がする

ゆっくりと沈むわたしも紙の舟



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松村 華菜(まつむら かな)

昭和11年、熊本県荒尾市生まれ。
平成3年、熊本噴煙吟社入会。
平成4年、川柳人間座入会。
平成13年、熊本噴煙吟社幹事同人。
平成18年、川柳葦群(川柳人間座後継)同人。
平成24年、現代川柳新思潮入会。


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by ringo-utahime | 2015-07-21 07:32 | 川柳本 | Comments(4)
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川柳句集「かぐやー川柳少女の十五の夜ー」を紹介。
一昨年の発行当時、中学3年生にして川柳歴12年の少女・倉間しおりさんの句集として話題となった。


「月が太陽を反射するように、川柳は自分自身を反照する。生命そのものの強烈なきらめきを、十七音という定型によって、ある種のフィクションへと変換する。」
(あとがきより)




ひとりでは月に帰れぬかぐや姫

お気に入りのペンなら嘘も書きやすい

憧れてキリンに化けてみるバナナ

魂に塗るクリームはありますか

尾を生やす正直者になりたくて

夏祭り魑魅魍魎とすれ違う

沈黙に泡を数えるソーダ水

桃一つ熟れて私の夏終わる

母さんの愚痴を餃子に詰めておく

ダイビング揺れる水面を貫いて

蜜漬けの梅干し噛んで堕落する

目玉焼きどろりと泣かす皿の上

ひっそりと風呂でイルカを飼ってます

眠れないのをコーヒーのせいにする

優しさの特売ですとチラシ来る

有料の愛でもほしい時がある

深夜二時手首の脈をふと探す

ゼロという数字に目鼻描いてやる




黒をバックに白字で浮かびあがる川柳句集………絵本のようなレイアウトに、十五才の少女の珠玉の感性が光る。お気に入りの一冊。
彼女を見習って、斬新でオリジナリティのある語彙と表現を模索したいと日々あがいている私だ。

(((^_^;)


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「川柳句集かぐやー川柳少女の十五の夜ー」

平成25年12月15日初版発行
著者/倉間しおり
発行所/新葉館出版
価格/1200円+税


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by ringo-utahime | 2015-07-14 23:11 | 川柳本 | Comments(2)
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楠の会(福岡市)15周年の2001年12月2日に発行された川柳句集『えすぷれっそ』をコピーしたものを冨永紗智子さんから頂戴した。44ページ、約500句掲載。

冨永紗智子さんは1937年2月13日、福岡市博多生まれ。
川柳を始められたのが1971年、番傘川柳本社同人になられたのが1983年。
1986年に川柳「楠の会」を発足、1989年には福岡市文学賞を受賞されている。
私の尊敬する女流川柳作家のお一人でもある。




~川柳句集『えすぷれっそ』より ~


ブーメラン抛る遠くを見ておいで

父がゆらり母がゆらりと風の盆

直線と直角で足る父の地図

鼻のない子象を群れのまん中に

塩壺に埋める母の数え唄

昔むかしのツケが残っているめしや

春の川すこし蛇行が過ぎないか

新任の白いチョークが折れ易い

小さな殺意押しピンが上を向く

一枚の皿一枚のシェフの画布

十進法のゼロにはきっと罠がある

北国の土を蹄は忘れない

明日を信じるじゃがいもの芽の白さ

破れやすい金魚掬いに風は秋

卵剥く君を裸にするように

天井桟敷から指笛を鳴らす

待つことに慣れ黒猫を抱くおんな

椰子の実と生まれた島の話など

誤解とく術は知らない彼岸花

散る日まで男の視野の薔薇の赤

再会へ冬の切り絵を抜けていく

究極の答えはきっと煮凝りに

自画像の目線は海の碧を追う

ふるさとに遠く地方紙買うおんな

年下の男とセロリさくと噛む


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今週の「りんごの詩」の花。オリエンタル百合の《マーロン》。

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by ringo-utahime | 2015-06-09 22:03 | 川柳本 | Comments(4)

2013年4月開設『りんご詩姫のブログ(新)』‥‥文芸川柳、フラメンコ、ボイストレーニング、パン教室、グルメ等々、趣味に生きる元気印「りんご詩姫」の〈気まぐれブログ〉。小さなスナックのママです。よろしく♡♡


by りんご詩姫