台風19号が去った宮崎。まだ時折強い風が吹いている。

昨日12日(日)、開催予定だった「第50回川南土の子番傘川柳大会」も台風のため中止に。
外出もできず、家でゴロゴロ過ごす。

小林信彦著「うらなり」を読んだ。
2006年《第54回菊池寛賞》受賞作品。

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夏目漱石の「坊っちゃん」の登場人物〈うらなり〉を語り手にして、漱石の小説の後日談を書くという趣向が面白い。

〈うらなり〉は、家が没落し窮乏した顔色の悪い英語教師。
〈マドンナ〉を横取りしようとする教頭〈赤シャツ〉の策謀で、延岡に転任させられる。
昭和9年に、数学の参考書を出版した〈山嵐〉と、老年になった〈うらなり〉が、昔日を回顧する場面から始まる。

〈うらなり〉は、延岡から姫路に転任しながら教師を続け、平凡な結婚をして平穏に生きる。
小説「坊っちゃん」の脇役から見れば、無鉄砲な〈坊っちゃん〉は、無責任な〈B型ヒーロー〉として違和感を持って描かれる………なるほどと頷きたくなった。

小説「坊っちゃん」で語り手の〈おれ〉に名前がないことは、あらためて漱石の凄い技だと思うが、ゆえに小説「うらなり」でも〈坊っちゃん〉の名前が明かされていないことに、妙に感動を覚えた。

〈マドンナ〉の描かれ方には賛否両論ありそうだが………私自身は、すこぶるリアリズムを感じた。

もし漱石が生きていたら、この小説にどんな意見を抱くかが気になるところでもある。

「坊っちゃん」のスピンオフ小説として楽しめるお薦めの一冊。

(。^。^。)



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by ringo-utahime | 2014-10-13 17:21 | 書籍 | Comments(7)

福岡市の「川柳くすのき」(富永紗智子会長)秋季号を紹介。

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~新樹抄〈夏季号〉推薦と鑑賞(松永 千秋)より~

歯車は歯車のまま朽ちていく(元気)
遮断機がほどよく下りる別れ際(かな女)
ささやかに駅弁フェアで旅をする(唱悦)
掌の満月僕だけを照らす(芳彦)
五十年かけて素直になれません(成子)
川端で遊びがてらに咲きましょう(そう美)


~近詠「新樹」(自選句抄、124名参加)より~

傘を差す角度で分かる惚れ具合
特価品選ぶ妻には近寄れぬ
盛り塩に気合を感じ店くぐる
片手上げ自宅へ戻る子供達
セールスに息子を重ねひとつ買い
(福岡/山下 唱悦)

ケータイの着信音は夢一夜
鬼灯の朱のほんのりとして夕日
長雨やおぼろおぼろの喉仏
秘を抱いて眠る胎児の形して
ミシン踏む昨日は昨日今日は今日
(大牟田/山下 華子)

木枯らしに鳴る風鈴のような恋
デキ婚を金婚式で子にバラす
さっぱりと身辺整理して師走
横たわる女湯時を止めている
無音無風嫌いになったからですか
(鹿児島/石神 紅雀)

聞き役に回る我が家の笑い声
日々好日今日も美味しい酒二合
消印有効締め切りはもうあと僅か
向日葵をしっかり咲かす被災の地
軌道修正すると私でなくなった
(福岡/石田 酎)

現実と理想の狭間立ち止まる
塩漬けの夢が再び始動する
春財布夢の札束入れておく
太っ腹財布の中はすぐに空
あら不思議 筋書通り事運ぶ
(福岡/内野童里夢)

テレショップに嵌まるおんなのすきま風
神童と呼ばれた果ての宇宙人
エピローグ急かせる恋の余命表
世界から彩を奪った母の癌
誕生日占い開く闘病記
(宮崎/さわだまゆみ)

ひまわりのどこを切っても真っ赤な血
夕焼けがきれいで死んだ気がしない
この橋を渡れば戻れませんいいね
ああ晩夏ひとり逸れてしまったわ
一夜だけひっそり咲いておりますの
(福岡/柴田 美都)

咲かぬ木を一生めでた母である
強かに生きた母です愛無限
ずぶぬれのカルテの中の真人間
弾む日の母の髪型夢を持つ
物わかりのいい母さんが吐く本音
(都城/主税みずほ)

無い袖は振れぬ男のカタルシス
仇波が浅瀬に騒ぐカリカチュア
まっすぐに歩くことにも疲れ果て
博学な君の答えは多面体
独り住み自由と孤独使い分け
(糟屋/中村 鈴女)

一匹と一羽と一人集う森
価値観の違い珈琲この違い
カバー曲想い出の彩塗り替える
SLのスイッチバック汽笛鳴る
逆転の発想真実は一つ
(福岡/冨永紗智子)


~課題吟「首」(横尾信雄選)より~

入選 折り鶴の首が戦争嫌い抜く(村山 明美)
入選 軽い首ばかりひしめく永田町(さわだまゆみ)
入選 首すじのほくろに愛された記憶(上田しずか)
佳作 戦列を離れた首を撫でる風(久崎 田甫)
佳作 奔放な首に新たなネックレス(水谷そう美)
秀吟 風を読む張子の虎の首になる(冨永紗智子)
秀吟 まわらない首もわたしと性に合う(石田 酎)
秀吟 首振ってわたくしひとり立ちします(中川しのぶ)
軸吟 リストラの首安くして売り歩く(選者)


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by ringo-utahime | 2014-10-09 22:40 | 川柳誌 | Comments(1)

「川柳葦群」第31号

「川柳葦群」(柳川・梅崎 流青編集発行)第31号を紹介。

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~葦の原推奨作品(梅崎 流青選)より~
行き暮れてキリンの首がまた伸びる(清水美智子)
棺の中やっとまつりを終えたのか(田中ほつ枝)
あと少し燃える酸素をつぎたして(小林 宥子)
からまってくるのは過去についた嘘(青砥たかこ)
ピリオドは納豆好きになった朝(上田しずか)
粥と匙あの世この世を行き来して(板垣 孝志)
自画像の深いところに釘を打つ(柴田 美都)
赤い靴母に履かせる祭りの夜(さわだまゆみ)
チョキの指じっと見つめる負けている(木村 翔龍)


~川柳葦群抄より~

断捨離を決心させた癌告知
終活の母に寄り添う百日紅
天声人語ノートへ綴る闘病記
虹色の絵の具継ぎ足す介護録
きれいごと並べて恙無いブログ
(宮崎/さわだまゆみ)

胸の底クジラは泣いてばかりいる
哀しくてクジラは夜と同じ色
雨の音窓を開けたら沈みます
ゆったりと言い訳をする海の青
クジラの絵描けずに空を見ています
(佐賀/真島久美子)


~前号「川柳葦群抄」鑑賞(新家 完司)より~
ひもじくて赤いポストになっている(真弓 明子)
魂を濾過する母からの手紙(さわだまゆみ)
おとうとが戻ってこないおもちゃ箱(柴田 美都)
春の日は猫のテンポで暮れてゆく(木本 朱夏)
日記には淋しかったと書けばいい(真島久美子)


~近詠「葦の原」より~

諸行無常と鳴く八月の蝉たちよ
さくら色に染めたい母の余命表
今生は美しいねと母の文
素数のまま生きて愛した母の背
ウィットに富んでる母のひとり言
赤い靴母に履かせる祭りの夜
アドリブが下手で愛しい母の舟
(宮崎/さわだまゆみ)

無いものが欲しくて伸ばしきった腕
渡ったらしらける橋で逢うている
褒められも叱られもせず夕焼ける
明日からはもう別々の物語
愛すべきもの手放した顔は何処
人間を信じているのです寝顔
悲しみはここにもあった触れた頬
(佐賀/真島久美子)

不思議から芽を出してくる好奇心
天辺の一歩手前にある踏絵
やましさを匿うように春霞
煮凝りの頭をほぐす月曜日
何気ない会話にまぶす棘ひとつ
父という保護色で我が子を包む
人生という荒波に漕ぎ出す大志
(宮崎/肥田木聞明)

この森を育む虫も地下に棲む
こぼれ種いつしか親を背負ってる
袋などかけぬわが家の桃だから
殴りあいしながら握手考える
新聞に時の零れる音がする
どこで食べてもさぬきうどんの味だ
人民の国に汚職のトラがいる
(宮崎/西岡 南風)

このシャツは勝負服です黄色です
にんげんを信じた犬が輪にはいる
ぬかるみを出て来た母の空の秋
父さんの風が無月の杜で呼ぶ
胸の傷知っていますか星月夜
夜なべした母に恋したちゃんちゃんこ
菊人形丸く小さい母を向く
(都城/主税みずほ)

火照る身を風に抱かせて更年期
脱力の私布団と同化する
窓明かり孤老受話器にすがりつく
大勝のための敗戦積む夏日
好物を前に論点ぼける酒
捨てないで愛の名残りのペン二本
義母が逝く親が一人もいなくなる
(鹿児島/石神 紅雀)

人間が好きで出世を棒に振る
熱燗に愚痴吐くおれの依存症
ひとり寝る耳を晴らした深夜便
善人のレッテル貼られ生き難い
散り急ぐ花のいのちと似るドラマ
決心も挫折も知っているその後
(福岡/石田 酎)


~「葦の原」鑑賞〈第30号〉(大西 泰世)より~

米粒もひとつ人間も一粒(荻原 鹿声)
削られて仏になるか屑になるか(野沢 省悟)
パンジーが笑うと笑うスニーカー(原田 順子)
受け入れるしかない雨もサヨナラも(真島久美子)
ゆっくりと食べる男が似合う村(肥田木聞明)
息が合うように演じる靴と靴(寺津とも子)

★エッセイ「竹刀の先に見えるもの」(真島久美子)

★野沢省悟句集『60』鑑賞(吉田 健治)

★エッセイ「運動靴」(さわだまゆみ)



▼課題「菊」(楠根はるえ選)より
亡き父へ思いの募る菊花展(さわだまゆみ)
白菊に悲しみ詰めて母の葬(肥田木聞明)
前向きに生きて溶けあう菊日和(石田 酎)
佳作 野菊摘む思い出を摘む風の中(高田 泰夫)
佳作 貧しくはないと一輪挿しの菊(辻内 次根)
佳作 江戸菊の四君子たらん気品見せ(中村 鈴女)
特選 祭壇の菊かあさんを包み込む(石神 紅雀)
軸吟 愛されて菊もわたしもほっと咲く(楠根はるえ)

▼課題「芝居」(主税みずほ選)より
感情移入アニメに演技つけるペン(西岡 南風)
玄人の芝居に泣いた影ふたつ(石田 酎)
佳作 人生の襞に触ってくる芝居(肥田木聞明)
佳作 幕引きの巧さあなたを忘れない(上田しずか)
佳作 しあわせな主婦を演じるクラス会(さわだまゆみ)
佳作 老い仕度ひとり芝居が忙しい(中川しのぶ)
佳作 一芝居打ってこの世の晴れ舞台(中村 鈴女)
特選 あっけなく芝居のように母が逝く(石神 紅雀)
軸吟 罪の木へ芝居がつづくベレー帽(主税みずほ)



~「川柳葦群」秋の句会より~

席題「橋」(木村 翔龍・和才 美絵共選)
綾取りの橋を渡ってくる民話(梅崎 流青)
口角を上げれば虹の橋になる(真島久美子)
虹の橋渡って逢いに来いおとこ(柴田美都)
男の火橋の途中で燃えつきる(松村 華菜)あ
橋一つ渡り時間を巻き戻す(真島久美子)
たった一夜で女が橋を塗り変える(清野 玲子)
橋のない川を渡って結ばれる(柿添 花子)
恋人よ橋を渡っていいですか(柴田 美都)
流されてなるか私の橋だから(大家 夏子)

宿題「野心」(清野 玲子選)
ぬるま湯に程良く枯れてゆく野心(中村 智夫)
手に入れるまでは無欲の顔でいる(真島久美子)
野心かな赤い小菊に手を曳かれ(山部 牧子)
美しい鎖骨で狙う玉の輿(さわだまゆみ)
ある野心ただひたすらに拭き掃除(真島久美子)
空いつか染めてみせると赤トンボ(木村 翔龍)
人知れず便器磨いているいつか(梅崎 流青)

宿題「グルメ」(真島久美子選)
最終のグルメは母の梅茶づけ(松村 華菜)
美食家の母へ試練の闘病記(さわだまゆみ)
舌でもてあそぶ白子の危うさを(梅崎 流青)
ランチタイム女は無口にはなれず(吉開 綾子)
海水で洗って食べる海のもの(梅崎 流青)
三ツ星の男を少しずつかじる(選者)

宿題「雑詠」(梅崎 流青選)
エンディングノート急かせる稲光(さわだまゆみ)
思い切り呼んで返ってきた木霊(大河原信昭)
茄子の馬コトリと母の帰る音(松村 華菜)
急かされているのでしょうか夏の雨(真島久美子)
鎖骨からふと漏れてくる孤独感(山下 華子)
音たてて流れる夏の接続詞(真島久美子)
雨の降る音を紡いで首に巻く(選者)



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by ringo-utahime | 2014-10-03 22:09 | 川柳誌 | Comments(5)

「川柳番傘10月号」

番傘川柳本社(大阪)の「川柳番傘10月号」が届いた。

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表紙絵は「曼珠沙華」(高岡秀造・カット)。


~誌友近詠(住田英比古選)より~

独り住み私ひとりのパスワード
追っかけて出雲まで行く神無月
田の神が化粧する日を待つ棚田
モノクロの頃は人情味があった
ラップした秘めごとなのに顔を出す
(宮崎/永友 淳子)

苦瓜の苦味ザクザク邪気払う
安穏とさせてはくれぬニュース欄
雑草も迷いも抜いて咲かす花
生真面目に咲くサルビアに愚痴聴かす
冷静なことばを誘う花の青
(薩摩川内/春田あけみ)

カルメラにはしゃいだ母の秋祭り
七輪にこだわる父の初秋刀魚
山頭火みちづれにする秋の酒
柳友の絵手紙秋を深くする
(宮崎/さわだまゆみ)

がんばれと言わない友に支えられ
虫籠に入りたくなる時がある
なんだか伸びたようだな生命線
エンディングノート書かないままに秋
(宮崎/中武 弓)

消しゴムで消せぬ談話のいい加減
立ち位置を忘れるほどに効く媚薬
反日と離米促してる踏み絵
(鹿児島/松本 清展)

秋なすび小ぶりなうちに嫁が採る
もうひとつ袋もってる女たち
落人の里に今年も帰省する
(宮崎/江藤九州男)

親離れ子離れ散って核家族
自分史の伏せ字に疼く消した罪
使い込んだ人生余白まだ惜しむ
(宮崎/甲斐 碌詩)

高値呼ぶ絶滅危惧種鰻かな
戦いの好きな神様いて乱れ
繰り返す波の音にも明日があり
(宮崎/自流 譲)

日々生きる心の糧は歌心
菜園のバトンタッチに秋の雲
探しもの今日もですかとまた言われ
(宮崎/冨田 博)

集魚灯夏の小川にある童話
時々は脳の扉を開け放つ
小菜園の土と話をしに帰郷
(宮崎/肥田木聞明)


~各・地・句・報 8月句会(森口美羽抄)より~

《宮崎番傘》(九州男報)
若者の色と馴染めぬ絵の具箱(まりん)
過労死の向こうに寒い数がある(みずほ)
健診の数値が縛る酒の量(碌詩)
名案を流してしまう多数決(紅雀)
多数派の風に逆らう杭になる(聞明)
古い順に食べるとみんな古くなる(紋章)
出世して暴かれだした古い傷(敬女)
青柿を数え気だるい午後の風(ほたか)
頭数揃えて臨む義理の席(弐恵娘)
プールした知識もいずれ白いバラ(義山)

《入来わくわく番傘》(あけみ報)
ヘマしてもニッコリ許す人がいる(ピアノ)
愛されていると思っている夫(芙蓉)
意地悪を愛情だとはつゆ知らず(洋子)
勘違いそれでも夫婦五十年(しず香)
右からの風に変わってから寡黙(紋章)
もう一度会えるきっかけ模索中(すずらん)
勘違い独りよがりの花が咲く(みえ子)


友の会のページ
◆課題『音』(八木孝子選)より


《入選》
独り居をしきる電子の音は友(川崎 敬女)
心音に覚悟ができて母になる(川崎 敬女)
団塊の青春跳ねるジャズライブ(さわだまゆみ)
爆音で電話が狂う基地の町(冨田 博)

《特別の日の音》
石清水うまいうまいと音をたて(永友 淳子)

《心で聞く音》
コンサート余韻に酔って席立てず(甲斐 碌詩)

《佳句》
まな板の音が終戦告げている(肥田木聞明)
快音にふるさとも沸く甲子園(富田 博)

《秀句》
ピンヒールの音もポップな初デート(さわだまゆみ)
水を飲む命の音を聴きながら(肥田木聞明)


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~今週の「りんごの詩」の花~


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by ringo-utahime | 2014-10-02 23:50 | 川柳誌 | Comments(1)