「川柳番傘8月号」
2013年 08月 07日
番傘川柳本社発行『川柳番傘8月号』を紹介。
表紙絵は「来島海峡」(高岡秀造・カット)
「巻頭言」は、主幹の田中新一氏の〈しんどいことをやれるのがめでたい〉。
~同人近詠~ (住田英比古選)
千年は残る紙漉く職を持つ
シベリアの星ふるさとのかすんだ日
五分粥の友と夕日に座ってる
転居したどこの空気も肌に合い
川柳と寝食共にして若い
(宮崎 中武 重晴)
絵ハガキの中で遊んだ疑似夫婦
平凡な夫婦を描くエンピツ画
再会の虫喰い画布へ筆をとる
キャンバスをはみ出す老いの絵空事
残された二人の絵から虹が消え
(宮崎 間瀬田紋章)
もう私に戦争語る人がない
教科書が子に戦争を語り継ぐ
簡単に特攻語るなと伏し目
歯が全部抜けて帰還の若き父
学徒動員指先奪われた母よ
(薩摩川内 石神 紅雀)
◆岸本水府川柳集 その⑬(完)
何万の食べものあるにおもゆだけ(昭和40年)
~誌友近詠~ (松本初太郎選)
語り部とモノクロになる原爆忌
今にして歩兵の父が誇らしい
からいもで鍬をふるった開拓史
遠い日の海人草のほろ苦さ
母の年越えてこだわる手前味噌
ひまわりがゴッホの想い聞いていた
(宮崎 永友 淳子)
玉音の意味も分からず泣いた夏
黒い雨憎んだ祖母の闘病記
ミリタリズムも軍歌も嫌う寡婦日記
神の名を語る戦争仕掛け人
ファシズムが消した命に捧げる灯
平成の平和すいとんにもはしゃぐ
(宮崎 さわだまゆみ)
いつからか夢という字がかすれだす
夫婦喧嘩喜劇仕立てで披露する
ゆったりと生きて余生の医者知らず
ノーメイク気配りいらぬ日曜日
母の星へブランコ高くけり上げる
(宮崎 高峰 桂介)
◆課題吟
課題「軽い」 (福岡)森園かな女選
出合い系サイトで軽い縁結び(自流 譲)
重症の見舞い励ます軽い嘘(甲斐 碌詩)
軽い嘘飛び交っているクラス会(さわだまゆみ)
あの人の口には羽根がはえている(中武 弓)
恋棄てて軽い眩暈を持ち歩く(石神 紅雀)
◆各地句報 (岩田 明子抄)
宮崎番傘6月句会(九州男報)31名
ありがたい苦しい時の妻の傘(巽)
空っぽの心を埋める君の笑み(憲一)
企みを秘めて差し出す女傘(まゆみ)
空っぽはいいねたくさん入るから(義山)
傘ひとつ二人の仲が近くなる(信)
空っぽの心寄り添う影法師(治夫)
ここからのドラマ気になる忘れ傘(紋章)
逢いに行く大きめの傘さしてゆく(桂介)
◆お便り紹介
鹿児島で国文祭(石神 紅雀)
◆友の会のページ
課題「優しい」 (いわき)野木 尋子選
〈入選〉
おばあちゃんの民話優しい子守唄(さわだまゆみ)
失敗を笑って許す母心(甲斐 碌詩)
思い切り抱いてあなたを慰める(川崎 敬女)
〈秀句〉
他人の子叱る優しい過疎の村(さわだまゆみ)
(*^_^*)
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