『シベリア』川柳

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毎年夏になると必ず読み返したくなる本がある。辺見じゅん著「収容所(ラーゲリ)から来た遺書」だ。
戦後、捕虜としてシベリアに抑留され、極寒と飢餓と重労働による死の恐怖と闘いながらも、お互いに励まし合い、文学を学びながら俳句を詠むことで、最後まで志と希望を捨てなかった男たちの実話である。
彼らのリーダー的存在で、1954年(昭和29年)ハバロフスクの強制収容所で死去した山本幡男氏の6通の遺書が、敗戦後から12年目に山本氏の遺族の元に次々と届けられる。厳しい検閲検査を逃れるために、それらの遺書は全て、仲間による「暗記」によってバラバラに持ち帰られたものだった。7通目の遺書が山本家に届いたのは、なんと1978年(昭和62年)、山本氏の没後33年目の夏だったという。
過酷な収容所生活にも屈せず生き抜いた彼らの知性と人間性には、生きる勇気と感銘を与えられる。戦争反対への思いも込めて、私が、たくさんの方々に呼んでいただきたいと願ってやまない一冊でもある。

~「川柳葦群」2012年10月号掲載、随筆《私の中の戦後》さわだまゆみ~より一部転載。




『収容所(ラーゲリ)から来た遺書』

著者/辺見じゅん
発行書/文藝春秋

※第21回大宅壮一ノンフィクション賞受賞(1990年)
※第11回講談社ノンフィクション賞受賞(1989年)



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課題『シベリア』の川柳を集めてみた。

【シベリア】
シベリアの飢えとたぶっている星座(石川 鮎郎)
凍てつく日屍悲しやシベリアの(吉田 江道)
シベリアが浮く八月の蜃気楼(斉藤 栄泉)
シベリアの寒波抑留指を折り(山本憲太郎)
シベリアの寒気と馬が合ってくる(池田郷太郎)
シベリアを越えた耳です今も鳴る(進藤すぎの)
シベリアの苦労を話す雪が降る(高橋 武郎)
しあわせだからシベリアをまだおもう(土居 哲秋)
シベリアを丸洗いして陽に曝す(土居 哲秋)
シベリアは忘れて欲しい父の酒(遠藤 枯葉)
シベリアの過去が燻るしゃれこうべ(野田はつを)
黒パンのかけら抑留記の序章(榎本 信治)
生と死のシベリア今日も夢に出る(横井 正吾)
雪が舞うシベリアの話もうしない(横内 帆三)
捕虜の顔二十歳にならぬ歯の白さ(三條東洋樹)
捕虜の過去じゃがいもの皮うすくむく(濱本 千寿)
雪原に兵士羊の群れとされ(白井 博行)
くずいもが転ぶと捕虜がみな転ぶ(土居 哲秋)



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by ringo-utahime | 2015-08-11 23:42 | 川柳(課題別) | Comments(0)