「川柳葦群」第35号

「川柳葦群」(柳川・梅崎 流青 編集発行)第35号を紹介。

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~葦の原推奨作品(梅崎 流青選)より~
スリッパの底には一匹の骸(前中 知栄)
自分から自分へ書いている手紙(和才 美絵)
手折られぬ場所でひっそり咲くつもり(村上 久美)
無一文になると螢になれそうな(野沢 省悟)
行き急ぐ蝉よ答えを出せたのか(長井すみ子)
故郷に釘一本を打ちに行く(吉開 綾子)
何もかも捨てたら夏の雲に乗る(清水美智子)
青空の意味をヒマワリだけが知る(中原 由美)


~川柳葦群抄(同人作品より)~
〈私の句〉
大砲を花火に戦後七十年
神様になって悩みを聴くグラス
元カレの婚約が呼ぶ砂嵐
封印の母性を醒ます男泣き
ダイヤモンドエイジ勝ち取るフラメンコ
(宮崎/さわだまゆみ)


洗剤も愛も少しでいい私
全身の力を抜いて逢いましょう
(中津/和才 美絵)

双方に未練残して風は止み
(筑後/木村 翔龍)

あなたとの隙間に植える花茗荷
(福井/奥村美枝子)

身を立てて小さな故郷売りました
(奈良/山部 牧子)

炎天の乳房愛しい沼になる
(海老名/やまぐち珠美)

警報が鳴りっ放しの夏の脳
伏兵が夢の中まで追ってくる
(和歌山/木本 朱夏)

夫の顔浮いて沈んで盂蘭盆会
(札幌/小林 宥子)

生真面目が狂ってみてもまた一途
(今治/村上 久美)

秋の絵になろうと風がなびいていく
(越前/米谷あや湖)

ひまわりの絶唱を見る蝉の殻
満月に身を投げようか秋ざくら
(熊本/中川しのぶ)

無欲にはなれぬ深夜の返し針
便箋にポツリと溜め息を落とす
(大牟田/山下 華子)

生き方も死に方もある灯油缶
棄てられてからサボテンに花が咲き
(大和高田/板垣 孝志)

カーテンの外まで迫るお月様
魂の抜けた話で盛りあがる
(大川/柿添 花子)

満腹になると虚ろな昼の月
(松江/内田 久枝)

積木の家いそいそ向かう解体屋
(郡山/山下 和子)

血の戦さ砂塵の中のつぶらな瞳
(佐賀/砥川 房代)

満点にまだまだ遠い目玉焼き
(佐賀/大屋 夏子)

シンプルに生きる炎に蓋をして
浅瀬なら渡れそうです花筏
(荒尾/松村 華菜)

川の音対話途切れてしまいそう
八月や母の土鈴がふと耳に
(福岡/清野 玲子)

桃を剥く過去に触れてはいけません
鳥だったころからずっと掠れ声
(福岡/柴田 美都)

一匹の蚊に成り果てる赤ワイン
遠出する生命線を書き足しに
(佐賀/真島久美子)


~前号「川柳葦群抄」鑑賞(新家 完司)より~
饒舌な患者を持て余す歯科医(さわだまゆみ)
携帯は鳴らずあなたの確かな死(松村 華菜)
メルアドの交換をして以下次号(木本 朱夏)
袖口の汚れ隠して向かい膳(木村 翔龍)
持ち時間咲いてきっちり去るつもり(吉開 綾子)
叱られて学んでいます叱り方(真島久美子)


~近詠「葦の原」(梅崎 流青選)より抜粋~
〈私の句〉
玉ねぎサラダ透明な血に憧れて
罪人も詩人も生み落とす孤食
ただバラに生まれただけの深い罪
骨抜きにしたのは黒百合の涙
三面鏡もホントの私見抜けない
行間を読んで大河を渡る蝶
新盆の寡婦の美しさにめまい
(宮崎/さわだまゆみ)


美しい嘘が鏡の前にある
戦争を見飽きただろう天の川
(青森/野沢 省悟)

たんぽぽの綿毛に添うて老年期
海峡を素直にわたる母の下駄
(札幌/小林 宥子)

安らぎはあるか瞬きせぬ蛇よ
一人ずつ帰るひとりの穴の中
(大和高田/板垣 孝志)

ヒマワリは焦げて原発再稼働
氷河崩落河童の皿がひからびる
(和歌山/木本 朱夏)

また人を一人惑わす花石榴
(柳川/吉開 綾子)

群れを出てコップの中にいる自由
白旗が血に染まるまで気付かない
(大川/渡辺 桂太)

過去形になっても燃える薬指
(松江/清水美智子)

失った物は数えぬ震災忌
逃げ足の速い男だ三年忌
(いわき/真弓 明子)

逆切れをしようか蝉になれそうだ
靴脱いで覚悟を一つ黙らせる
(佐賀/真島久美子)

息継ぎの下手な金魚はわたしです
おそらくは戻れぬ橋と知りながら
(福津/樫根 わ子)

タイミングずれてくずれる予定帳
詰めすぎて蓋が出来ない夢のつぼ
(三重/青砥たかこ)

もうすこし魚のままでいましょうよ
耳たぶをすこし齧っておきました
(福岡/柴田 美都)

亡母に似た人としばらく駅の椅子
きっちりと男を一人料理する
(朝倉/緒方 章)

横糸の温さに触れる里神楽
賛成をした掌を重く持ち帰る
(日光/荻原 鹿声)

否定形ばかりが浮かぶ秋夜更け
八月の水平線にある微熱
(大牟田/高田 泰夫)

指先の記憶としばし微睡もう
うどん似るひとつの恋を見送って
(荒尾/松村 華菜)

道端に俺の欠片が捨ててある
アンパンの中に隠してある殺意
(松江/石橋 芳山)

ばら咲いてあの世この世のかくしごと
ときどきは見つけてほしい場所にいる
(熊本/宮本美致代)

炎昼になくすものなし曼珠沙華
桃の実のしろ後悔を吸い尽くす
(海老名/やまぐち珠美)

夕焼けを心に挟む謀
(北九州/楠根はるえ)

枯れる日が来るまで今日も洗濯機
(岐阜/堀 久美子)

家系図をなぞると森に辿りつく
(前橋/勢藤 潤)

そのままでいいと石榴の実が割れる
(今治/山内 房子)

四捨五入すればこの世はみな未練
(筑後/木村 翔龍)

コンビニの夜を彩る深海魚
脚光を浴びて狂った羅針盤
(和歌山/三宅 保州)

天国と地獄往復して生きる
手ぐすねを引いて女が待つ戦
(福岡/清野 玲子)

水面の月を割らずにいられない
夜までは引っぱりすぎる糸電話
(福津/水谷そう美)

カギッ子へ迎えが来ない遊園地
臆病とカルテの隅に書いてある
(三原/野村 賢悟)

人間の灰汁すくってもすくっても
(横浜/平田 耕一)

犬だった頃のシッポは捨てられぬ
復讐をまだ考えているバラの棘
(亀山/坂倉 広美)

戦争を知らぬ私も共犯者
(福岡/山口由利子)

するすると抜ける指輪にある火種
(糟屋/河野 成子)

子の傷に触れて寡黙な窓の月
(福津/河内やすこ)

待ったなし飴が溶けます戦中派
ヒロインに成れずじまいの浴衣帯
(都城/主税みずほ)

炎天の羅漢にそっと水掛ける
逢いたいなほろ酔いになる三杯目
(大牟田/山下 華子)

青い空にもどこかにあるだろう秘密
(熊本/阪本ちえこ)

雷鳴の音に目覚めているいのち
(福岡/石田 酎)

価値観を合わせ夫婦の顔になる
まっすぐな運命線に人が寄る
(鹿児島/石神 紅雀)

踏切の向こうに飛んだ福袋
(津山/田中 蛙鳴)

間違った位置まで戻るかたつむり
(札幌/夏 夕子)

絡まった糸は哲学なのだろう
龍の夢見たと男の厚い胸
(和歌山/佐藤 倫子)


~前号「葦の原」鑑賞(大西 泰世)より抜粋~
濾過されてますます弱き者と知る(荻原 鹿声)
時どきは過去をやさしく拭いてやる(宮本美致代)
人間の強さ尻尾も角もある(田中 蛙鳴)
待つことを止めれば風はただの風(真島久美子)
靴下の穴約束をまた破る(宗村 政己)
知らぬ間に押し寄せて来た緑色(正岡 里)
岬にはあの言霊がよく似合う(石田 酎)


~課題吟「 机」(清水美智子選)~
ほんとうの自分と向かい会う机(松村 華菜)
軋む音父の机は歌うたう(西岡 南風)
ライバルへの手紙机を拭いてから(大屋 夏子)
時効かも机の傷が喋りだす(寺津とも子)
受付の机迷子をもて余し(石神 紅雀)
頬杖をついて机に頼りきる(青砥たかこ)
晩学の机頬杖ばかり突く(横尾 信雄)
少年を人間にした文机(河西 草庵)
平常心取りもどさせる木の机(さわだまゆみ)
落日の机涙の痕がある(肥田木聞明)
佳 詩人にはなれず机と相撲とる(宮本美致代)
佳 机上から打ち上げて行く大花火(内田 久枝)
佳 文机に欠伸しているピタゴラス(中村 鈴女)
特 夢を書き夢を泣かせてきた机(荻原 鹿声)
軸 プライドがまだ沁み込んでいる机(選者)


~課題吟「迷う」(伊藤嘉枝子選)より抜粋~
迷い箸母の躾がまだ足りぬ(中村 鈴女)
鮫だって迷う日本の熱い海(平田 耕一)
迷うから庖丁の先狂い出す(河野 成子)
人間を切り上げようかどうしよう(清野 玲子)
仕合せの迷路アンテナ切っておく(田中 蛙鳴)
吹っ切れぬ迷いへ傘が畳めない(楠根はるえ)
白蓮も晶子も愛のラビリンス(伊藤 縁太)
迷うてはならぬ蛍の道標(柿添 花子)
フラメンコの汗が迷いを吹き飛ばす(さわだまゆみ)
七十年談話に迷う不戦論(石田 酎)
引き返すきっかけを待つ雨登山(石神 紅雀)
愛憎の狭間で迷う乱れ髪(横尾 信雄)
佳 迷うだけ迷って卵かけご飯(荻原 鹿声)
特 迷うから人間なんだろうこの世(阪本ちえこ)
軸 迷い道いいではないか先がある(選者)



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★誌代・年間(季刊) 4000円
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【問い合わせ先】
梅崎 流青
電話&FAX. 0944-72-6046
E-mail house7@cello.ocn.ne.jp


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by ringo-utahime | 2015-10-03 23:55 | 川柳誌 | Comments(0)

2013年4月開設『りんご詩姫のブログ(新)』‥‥文芸川柳、フラメンコ、ボイストレーニング、パン教室、グルメ等々、趣味に生きる元気印「りんご詩姫」の〈気まぐれブログ〉。小さなスナックのママです。よろしく♡♡
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