「川柳くすのき夏季号」(118号)

福岡市の「川柳くすのき夏季号」(118号)を紹介。
冨永紗智子編集・発行。31ページ。

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◆新樹抄(春季号)推薦と鑑賞(渡邊 桂太)より抜粋
人の輪にすんなり入る竹とんぼ(酎)
君は太陽見ているだけで火傷する(紅雀)
終活へ神の死角が見つからぬ(まゆみ)
恋人が老いていくこと知らず抱く(孤遊)
たっぷりと食べてゆっくり追いかける(正紘)
マイナンバー付いて人間軽くなる(信雄)
白い昼白い手紙を書いている(奈津子)
泡沫の夢がスープに浮いている(一恵)
明日のない恋彩のない昼花火(紗智子)



~近詠「新樹」(自選句抄、119名参加)より抜粋~


あの時の涙が今も乾かない
ジャングルを知らぬゴリラの悲しい死
(福岡/平本つね子)

人の世に乾いて花の種を買う
遮断機が上るあてどもない靴へ
(荒尾/松村 華菜)

ライバルの野良には負ける猫パンチ
溜息の出る日は深い笑い皺
(福岡/森園かな女)

火の章を生きるひっそり足袋を脱ぐ
それからを問えないままの走り梅雨
(大牟田/山下 華子)

喉元に詰まった嘘が呑み込めぬ
思い出が詰まった部屋を出る四月
(福岡/山下 唱悦)

ポジティブに生きる悩みも引き連れて
マドンナに加齢の二字が責めてくる
(佐賀/横尾 信雄)

見つめ合う目と目は猜疑心だろう
クリムトの官能私の眼を突く
(大川/渡邊 桂太)

絶不調空に釣り糸垂れてみる
一線を越えてますます他人めく
(鹿児島/石神 紅雀)

一枚の紙から鬼のこころざし
苦も楽も演じてボクの笑い声
(福岡/石田 酎)

地を這った苦労が実る五十代
優しさを武器にしている詐欺師達
(春日/内野童里夢)

野も畑も萌えて後継者がいない
人並みの暮しにもある上中下
(北九州/楠根はるえ)

命綱一本生きていた不思議
人間と人間ぶつかって火花
(熊本/黒川 孤遊)

仏壇に手を合わせれば無垢の風
遺影にも聴かせる朝のモーツァルト
封印の恋から線香の匂い
孤独に効くサプリメントが見つからぬ
光を奪う恋人の死よ母の死よ
(宮崎/さわだまゆみ)


血脈がひとつの命確かめる
肩の荷をやさしい色にした夕陽
(都城/主税みずほ)

ブーイング昭和一桁意固地です
木綿縞母の昭和が褪せている
(糟屋/中村 鈴女)

プルタブの指輪五歳のお約束
弱点を突かれここから雨になる
(福岡/萩原奈津子)

涙したここが私の始発駅
風呂敷を使うと母が転げ出る
(久留米/馬場ゆうこ)

産湯沸く五歳のあの日姉になる
連絡船故郷の訛近くなる
(福岡/冨永紗智子)



◆「女紋」守り抜いた田村百合子(黒川 孤遊)



◆課題吟「泉」(主税みずほ選)より抜粋
迷ったら泉の精に逢いに行く(西村 正紘)
ユーモアも愛もたっぷり抱く泉(松村 華菜)
人嫌い泉あくまで透きとおる(冨永紗智子)
震災で涸れた泉の深い傷(山下 唱悦)
清冽な泉みつめている孤独(中村 鈴女)
湧水の明日を約束する蛍(萩原奈津子)
涸れてゆく胸の泉に酒を注す(楠根はるえ)
愛し抜く決意へ上がる間歇泉(さわだまゆみ)
底無しの泉を持っている器(山下 華子)
欲望の泉が湧いて知る火種(石田 酎)
人間に戻ろう黄泉へ行く前に(横尾 信雄)
湧水の無垢に記憶を洗われる(藤岡 元気)
新刊の泉にわたし溺れそう(馬場ゆうこ)
いっさいを知ってる蝶が舞う泉(選者)


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by ringo-utahime | 2016-07-09 18:37 | 川柳誌 | Comments(2)

Commented by 月波与生 at 2016-07-20 22:56 x
恋人が老いていくこと知らず抱く

この句はすごい


Commented by りんご詩姫 at 2016-07-22 06:34 x
与生さん、こんにちは。
コメントありがとうございます。

孤遊さんは、お上手ですよね。
今年の熊本は、地震と水害で、本当にお気の毒です。
一日も早い復興をお祈りいたします。

m(__)m