「川柳葦群」第39号

「川柳葦群」第39号(柳川・梅崎 流青 編集発行)を紹介。

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◆葦の原推奨作品(梅崎 流青選)より抜粋
一冊の本と漂流して果てる(渡邊 桂太)
風を見よ風を感じよ今日生きよ(吉開 綾子)
夏至を過ぎもう脱ぎ捨てる殻がない(坂倉 広美)
どの指も叛くきっかけ待っている(長井すみ子)
影だけが鬼ごっこから帰らない(真島久美子)
騙されてみたいと思う心太(野村 賢悟)
人形の身の上話聞く納戸(横尾 信雄)



~川柳葦群抄より抜粋~


神様が私にくれる言の葉よ
鳴りやまぬ水の流れも生きる日も
(奈良/山部 牧子)

家族とは寄木細工のようなもの
今を生き明日を生きる生卵
(札幌/小林 宥子)

我儘なバラを演じている別れ
スマップを真似て解散する夫婦
猛暑日の汗ふき飛ばす金メダル
キャリアばかり気にする蟻の崖っぷち
コーヒーの香の線香を焚く盂蘭盆会
(宮崎/さわだまゆみ)


君と見る蛍は天に地に詩に
蝉しぐれの中に葬る朝の棘
(福津/長井すみ子)

ムーミン谷の夏を想像して過ごす
一匹になって金魚の夏終わる
(和歌山/木本 朱夏)

ふと抱く疑心暗鬼に揺れている
行き暮れてまだ何故何故をくり返す
(糟屋/中村 鈴女)

思い出を捨てたら楽だろうこの世
罪の数いずれわたくし火車の旅
(熊本/中川しのぶ)

明るさは失せぬ女の漂流記
火祭りがとっても好きなひとりぼち
(福岡/清野 玲子)

こころ変わり赤いドレスで蝶になる
口紅を引いて生き方変えました
(福岡/弘津 明子)

点と線だけで出来てるわたしたち
百年も前のおとこに恋をする
(福岡/柴田 美都)

人間が好きで鍵など不用です
アイロンを効かせたシャツととおくまで
(松江/清水美智子)

焼き尽くす夏よ記憶よ氷売り
ひまわりの海で私を裏返す
(筑後/木村 翔龍)

酒ぽとりぽとり愚痴など言う夕べ
静かにと言っても止まぬ世の乱れ
(柳川/吉開 綾子)

帰宅する時間に炊き上がる美談
本質を問うたか穴が開いている
(佐賀/真島久美子)



◆前号「川柳葦群抄」鑑賞(新家 完司)

年齢と折り合う気など無い炎(真弓 明子)
解毒剤のように指折る五七五(さわだまゆみ)
ふところの恋の火種が暴れだす(弘津 明子)
指圧してくれるあなたも介護中(寺町 和子)
たくさんを捨てて私が軽くなる(和才 美絵)
また一歩荒野へ足を踏み入れる(清野 玲子)
ぽっかりと白い雲から見舞われる(柿添 花子)
バラの赤人待ち顔になっており(吉開 綾子)
女度を上げる我儘と根性と(真島久美子)



~近詠「葦の原」(梅崎 流青選)より抜粋~


五感だけ頼りに今日を生きている
蛇の道をゆくため温度下げている
(中津/和才 美絵)

柔らかにもの言うひとの破れイス
すべてから解かれ自由な花柩
(佐賀/砥川 房代)

生き急ぐ手から零れる解熱剤
焼き捨てる手紙に秋の立つ気配
(和歌山/木本 朱夏)

針孔の向こうに見える蜃気楼
完璧なシナリオ虫が喰っている
(和歌山/佐藤 倫子)

ステテコになって昭和の海に居る
葱洗うクレオパトラを知っている
(青森/野沢 省悟)

十薬の白を信じている友よ
雨の粒一つひとつが過去となる
(柳川/吉開 綾子)

朝が来て命の終わる生卵
過労死の話を聴いている輪ゴム
(大和高田/板垣 孝志)

家系図のここに昭和という戦
捨てるべきもののひとつにさくら色
(栃木/荻原 鹿声)

骨はまだ鳴るか言葉はまだあるか
一本のミサンガ信じたい何か
(佐賀/真島久美子)

アンパンのへそから漏れてくる吐息
道ならぬ恋が賑やか趣味の会
(三原/野村 賢悟)

人間になるまで脱皮繰り返す
陽炎がやんわり首を絞めに来る
(佐賀/横尾 信雄)

能面がたしかに泣いていた演技
ひっそりと私が欠けてゆく薄暮
(横浜/原田 順子)

タイミングばかり気にして日が暮れる
約束を描いては消している孤独
(糟屋/中村 鈴女)

あやとりを手繰ってふる里へ帰る
ひまわりは帰る家などないのです
(福岡/柴田 美都)

父の樹を削り仏の顔を彫る
鉛筆を削ろう愛が届くまで
(福岡/弘津 明子)

ひと晩で曲がるきゅうりのひきこもり
名も知らぬ川を下っていく運命
(札幌/小林 宥子)

ハンドルを突然敵に奪われる
まだ青い青いトマトの直訴状
(福岡/清野 玲子)

赤と青混ぜると危険すぎる過去
透明にしたら敬遠するポスト
(三重/青砥たかこ)

あなたとの距離を縮めた通り雨
人生の幕を笑顔で引いた人
(佐賀/大屋 夏子)

千切っても焼いても付きまとう言葉
カッとなる火種仏にまだ遠い
(北九州/楠根はるえ)

てっぺんに行くと見えなくなる地上
絵手紙がポストで待っていた和解
(鹿児島/石神 紅雀)

帯しめてくれる母さん居ない夏
脱皮せよ恋せよと降る蝉しぐれ
ひとりカラオケ ロックに浸る藍浴衣
知覚過敏 惚れた男が消えてから
自由の身になって哀しい男の死
ドナーカード拒めば丸いまるい月
過呼吸をしずめる夜の写経筆
(宮崎/さわだまゆみ)


プライドをめった射しするバラの棘
一行で足りる私の遺言書
(札幌/夏 夕子)

決断へ雲の高さのこころざし
力むなと私を諭す郷の雲
(宮崎/肥田木聞明)

マイルール人間臭い今が好き
正体を投げだしてから冒険家
(都城/主税みずほ)



◆前号「葦の原」鑑賞(大西 泰世)より抜粋

花の下一期一会の会釈かな(田中ほつ枝)
朝顔が咲くまで昨日捨てきれず(渡邊 桂太)
嘘ついたあと思い切り尻尾振る(内田 久枝)
オブラート溶けて戦が胃に残る(楠根はるえ)
心して螺旋階段降りて行く(清野 玲子)
月光に照らされ夜を脱いでいく(石橋 芳山)
神さまは重い荷物をポイと置く(下釜 京)
腰伸ばし聞こう元気の出る話(石神紅雀)
増えているお一人さまの紙芝居(樫根 わ子)
カスミ草主役になってから 悲劇(夏 夕子)



◆課題吟「鍵」(主税みずほ選)

一本の鍵が許しを乞いに来る(平井 翔子)
キーワード尋ね詩歌の森をゆく(西岡 南風)
明日への鍵は心にありました(肥田木聞明)
古老から和解の鍵となるジョーク(石神 紅雀)
斜め読み辺りで鍵を見失う(横尾 信雄)
成功へ鍵を握ってひと呼吸(石田 酎)
鍵穴から情報盗まれるネット(さわだまゆみ)
 ストラップに囲まれ鍵が分からない(青砥たかこ)
 ロボットに心の鍵を奪われる(夏 夕子)
 冷めてゆく愛を知ってるスペアキー(荻原 鹿声)
 すれ違う絆の鍵が迷いだす(弘津 明子)
 秋ひとり心の鍵は確と持つ(中村 鈴女)
 満たされたなさけで開ける鍵の音(主税みずほ)


◆課題吟「すたすた」(夏 夕子選)

鮮血がすたすたテロの地獄絵図(石神 紅雀)
一本道すたすたと行く君が好き(主税みずほ)
あっけなく過ぎてゆくもの葬列は(小林 宥子)
少年の覇気すたすたと駆け上る(横尾 信雄)
幸せの後ろすたすた飢餓の列(楠根はるえ)
逃げ足は早い いけすかない男(青砥たかこ)
足早にあなたが去ったあとの闇(松村 華菜)
ティファニーの前を素通りする夫(さわだまゆみ)
 すたすたと賢い奴は出て行った(肥田木聞明)
 薄情な夏はサヨナラ言わず去る(伊藤 縁太)
 歳月は早足 愚図は置き去りに(村上 久美)
 すたすたと歩けぬ蛇を踏んでから(中原 由美)
 夜はスルー ボケモンゴーの道案内(夏 夕子)


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by ringo-utahime | 2016-10-02 22:26 | 川柳誌 | Comments(2)

Commented by h82261765 at 2016-10-04 10:02
こんなの詠んでみました。


台風を営業妨害だと怒る
夏枯れつづく夜のスナック
Commented by ringo-utahime at 2016-10-04 10:13
清展さん、おはようございます。

いつも短歌もお上手ですね。

雨が多いせいで、野菜の値段も上がっていますよね。

爽やかな秋晴れの空が恋しいです。

(((^_^;)