吉川英治(雉子郎)の川柳

「宮本武蔵」「新・平家物語」等で有名な作家吉川英治(1892.8.11~1962.9.7)は二十歳前後の頃、吉川雉子郎〈きじろう〉の名で川柳を詠んでいた。

柳号の「雉子郎」は〈焼け野の雉子の子を思う親心をしのんだもの〉で、吉川英治はかなりの親思いの青年だったらしい。

ちなみに、私は英治の名言「朝の来ない夜はない」が好きだ。

雉子郎の川柳を少し紹介したい。

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清盛も太閤も居ぬ京淋し

古本を売りて富みたる夕心

何尺の地を這ひ得るや五十年

貰はれて行く子に袂ただうれし

駈落は金の無くなる所まで

あめつちの中に我あり一人あり

死ぬんだと云へば女房泣きやあがる

新内よ流せ廓の雨上り

両国の美しい夜に風邪を引き

夏よろし君が翡翠の玉のかげ

生きぬれば蝶にも汗はありぬべし

小鳥店買はれ行くのと泣きかはし

その女八百屋に見たる夕かなし

渡海てふ火宅の中に油蝉

きりぎりす半分泣いて風が吹き

珈琲の香にさへ酔ひぬ恋すれば

うれしさに憂きに鬼灯吹く女

かにかくに吾が朝顔もうすれ行く

気が違ふほど夕焼けぬ夕焼けぬ

後に読む其の夜の小さき名刺の名

飯が旨いに止まれり俺の秋

風が出て来たよと下駄をはいた時

貧しさもあまりの果は笑ひ合ひ

思はれもする柩の中の静けさ

うら寒いこころに息が見えて来る

一人喰ふ膳にぽつんと紅生姜

どん底の人に不思議な顔の光沢

世の中におふくろほどのふしあはせ

生きようか死なうか生きよう春朧

おふくろは俺におしめもあてかねず

櫛一つ無くして帰るすみだ川

湯屋の前通れば晩い桶の音

仏壇はあとのまつりをする所

売れて居るところを見ない骨董屋

真ん中を歩く都の午前二時

落ちぶれてまだ鍵だけをたんと持ち

金銀の中で貧しき飾職

なつかしき日を張り板に張りつづく

このさきを考へてゐる豆のつる

春の夜の立ち聞きゆるせ女部屋

春をただ男やもめのふところ手

悶々と蠅を叩いてゐたりけり

年忘れおまへは帰る俺は寝る

この道でいつぷくしよう小春かな

子に甘く女房に甘くあられ酒




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Commented by kojiro-nomama at 2017-03-19 09:10
りんご歌姫さん
吉川雉子郎の川柳、沢山ありますね。
どの句も味があります。
UPありがとうございます。
Commented by ringo-utahime at 2017-03-19 09:29
さくら草さん、こんにちは。コメントありがとうございます。

ネットで見つけた中古本ですが、とても綺麗でした。
なんと、本代1円+配送料257円でした。

o(^o^)o
Commented by 陽花 at 2017-03-19 16:05 x
吉川英治が川柳されてたとは知りませんでした。とても味わい深い句ばかりですね。ありがとうございます。
Commented by ringo-utahime at 2017-03-19 19:17
陽花さん、こんばんは。コメントありがとうございます。

「雉子郎」の名は聞いたことがあっても、それが吉川英治だと知らない方も多いと思います。

(*^。^*)
by ringo-utahime | 2017-03-17 17:50 | 川柳本 | Comments(4)

2013年4月開設『りんご詩姫のブログ(新)』‥‥文芸川柳、フラメンコ、ボイストレーニング、パン教室、グルメ等々、趣味に生きる元気印「りんご詩姫」の〈気まぐれブログ〉。小さなスナックのママです。よろしく♡♡
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